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「あのさぁお前、俺のもんって自覚あるワケ?」
『い……っ』


叩きつけられた背中は痛くて、押さえつけられた壁はひんやりと冷たかった。でも、それすらもしっかりと感じられないほどに、目の前の丸井先輩の目は鋭くて冷たくて痛い。そのまま何度も何度も酸素を取り込ませないように口づけられ、何も考えさせないようにする。


「おい、聞いてんのかよぃ」
『せんぱっ……』


言葉を紡ごうにもそれを許さないのは先輩なのに。わざと何も言わせないようにしているのは先輩なのに。


「気持ちよすぎて何もいえねぇってヤツ?」


嘲るように笑う丸井先輩が怖くて顔を背けようにも、否定したくて首を振ろうにも、顔をしっかりと固定されてそれもできない。
全部全部、丸井先輩のせいなのに。いっつも私のせいになる。


『せんぱ、い……っ丸井先輩』
「んだよ」
『また……違う、匂い』
「うっせ」


そう言ってまた丸井先輩は口を塞ぐ。それはお前は何も言うなと言っているようで、私は丸井先輩の言いなりな奴隷じゃないのに、と思う。イライラしたいのは私も同じなのに、と思う。


「そんなのお互いさまだろぃ?お前だって他の男の匂いする」


全然違う。先輩はああ言っているけれど、私はただ日直のことで話していただけだ。先輩は他の女の人との情事後だ。先輩と私は違う。その行動の重さも軽さも全く違う。だというのに、やっぱり私のせいにされる。お前が他の男と話すからだ、とかなんとか言って。
ぐったりと項垂れた先輩は私の肩に顔を埋める。ふんわりとした髪の毛がくすぐったくて、身を捩ろうとしたけれど、先輩から小さく漏れ出る声に驚いて、私はそれができなかった。先輩が泣いているところなんて初めて見た。


「なぁ……いい加減、俺だけのもんになれよぃ……てん」


寂し気で優しい声に私は目をつむった。こうやって、私も先輩も抜け出せなくなっていく。
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