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わんには好きな人がおるんやしが、でーじかわいくて、小動物みたいにちょこまかしてて、でも時々わんより男前で、そんな男前なのにちょっとだけどじっこで、かわいくて、かわいくて、かわいい。
そいつの名前が梓月てんって言って


『何してんの平古場』
「うおおおああああ!?」
『うるさっ』
「梓月!?やーいつからここに!?」
『そうだなぁ……素晴らしいほどのにやけ顔で中庭にでてきたところからかな』


ぎゃあああ最初っから見られてたああああ!わんのにやけ顔ばっちり見られてたさぁ!!
小さくてほそっこい足を組んでベンチに座っていた梓月は真顔でじゅるると紙パックのジュースを飲んだ。潤った唇はなんとも性的でちょっとだけぞわりとしたのはひみつやさ。


「や、やーはこんなところでぬーそーがや」
『見たらわかるっしょ。ジュース飲んでんの』
「いや、そうじゃなくて」
『そうじゃなくて?だったら日光浴』
「まぁ確かにいいうわぁーじちやしが……今授業中やど」
『平古場には言われたくないね』


5時間目も始まって20分以上経っているだろうか。いみくじわからん英語の授業から逃げるべく教室から出て来て、今一番日当たりのいい中庭に顔を出せば梓月がいた。
ぬーだかデジャヴ。
そういや初めて梓月に会ったのもこんな天気のいい日の5時間目でこの中庭だった気がする。教室の窓から見える中庭はいっつも日光浴にはちょうどよさそうで、前々から目つけてたんやしが、その中庭のベンチに堂々と座ってる梓月を見つけた。見たこともねーらんかーぎだばぁ、なんて頬づえついていると、ふと顔を上げた梓月と目があった気がした。あくまで気がしただけやしが、ぬーやが気になって気になってしょうがなくて、一番後ろの席をいいことに思わず授業をこっそり抜け出して(裕次郎にはばれてにらまれた)、中庭に向かえば、待ってましたと言わんばかりに(わんにはそう見えた)口角を上げた梓月がいて、うっかり心を持ってかれてしまった。


『そう言えばあの時もこんな感じだった気がする』
「わんも今そう思ってたとこさぁ」
『私あの時授業に連れ戻されるかと思って身構えたんだからね』
「あれぬまーやが身構えたっていうんやがや。むる殺す気やったさぁ」
『そうだっけ?』


私あなたのこと知ってるよ、風紀委員のヒラコバくん。
なんて言って好戦的に笑いながら足を組みかえる梓月にこいつわんを殺る気まんまんやあらにと思ったし、でもそれもなかなかくぬひゃーうむさんと思ったのもまた事実。そういや4組に転校生が来たっていうのは聞いてたから、きっとくぬ女なはずと思ってこちらも好戦的に梓月の名前を聞いたぬがきっかけで時々こうやって話すようになった。そうしたら、梓月のだいぶ違った面、例えば、ぬーでもないようなところで転んでたり、でーじまぎさんな慧くんが立ってるせいで道を通れなくてちょこまかちょこまか動いてる姿だったり、それを見て笑ってるわんに真っ赤なかーぎしてわじってる梓月なんかじゅんにかわいくてかわいくてしょうがなくてにやけてしまう。


『何にやけてんの』
「別にぃ?」
『ふーん……で?平古場何しに来たの?平古場の苦手な英語でしょ今』
「なっ、ぬーでそれを!?」
『だから知ってるって言ったじゃん、ヒ・ラ・コ・バくん』


あの時みたいに口角を上げて梓月は立ち上がり、飲みかけのジュースをわんに渡した。え、ぬーがやこれ。これ飲んでいいわけ!?間接キスやっし!?って、そうやあらんどーや!「だから知ってる」ってどういうことだばぁよ!?


「ちょ、おい!梓月!ちょっと待つさぁ!」


焦るわんにおかまいなしに、歩いていく梓月はやっぱりかっこいいんやしが、きっとそぬかーぎは真っ赤やるはじと思うと、またにやけが止まらねーらん。
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