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インターホンを鳴らしたドアの先には、確かに柳生くんがいるはずだった。それだというのにゆっくりと、寧ろもたつくぐらいにドアを開けたのは、満面の笑みを浮かべた幸村くんだった。
何故。


『私階間違えたかな……』
「え?あってるよ、隣なんだから」
『いやでも私の隣は柳生くん家だし』
「そろそろ頭おかしくなってきた?あ、元からだっけ?」


いやいやまさかそんな。だって私、朝出かける時も、夜帰ってきた時も、隣の部屋に入っていくのは柳生くんで、ちゃんとあいさつもしてるし、あれ、なんでだ、本当に。だって、ほら、表札も柳生って。あれれ。


『は!?なんで!?なんで表札幸村になってんの!?』
「だって俺の家だし」
『いやいやいやいや御冗談を』
「なんで冗談なんて言わなきゃいけないわけ?」
『えええうそだ』
「うそじゃない」


私を見ている幸村くんは眉をちょっぴり寄せて、唇をとがらせた。なんていうか、女の私顔負けのかわいさで悔しい。とかそんなことを考えてる場合じゃなくって、おかしいでしょ。なんでこうなってるの。
柳生くんが隣にいると思って何年過してきたと思う?1年だよ!


「柳生は、俺の体調を心配して来てただけ」
『1年も!?』
「真田がうるさいんだ。ちょっと体調崩すとすぐこれだ。心配して押しかけようとするんだよ」
『にしても来すぎじゃあ……』
「柳生のおかげで静かに暮らせているよ」


肩をすくめて、でも少し嬉しそうに幸村くんは言う。まぁ、でも確かに、あの暑苦しい人間が家に来続けられても、逆に疲れてしまいそうだ。気持ちは嬉しいんだろうけど。


「まぁ、時々隣がドタバタうるさいけど」
『げっ』
「ばれてないとでも思った?いつも何してるの?」
『な、なんでもないし』
「梓月のふぇいすぶっくにコメントした時と同じくらいのタイミングで煩くなるんだけど?」
『わっ!わー!なんのことかなー!わかんないなー!私帰る!』
「待って」


ぶわぁっと熱くなった顔を隠しながら、急いで自分の部屋のドアに手をかけようとしたけれど、その手は届かないまま、幸村くんの手の中に納まった。


「で、俺以外の男に用事ってなんなのかな?」


背後に真っ黒なオーラを抱えて、幸村くんは私をドアの中へと誘いた。
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