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朝練のために家を飛び出した私は、思わず息をのんだ。
いつの間にこんなに降ったのだろう、という具合に降り積もっていたからだ。そして、今もなお降り続いている。私はいそいそと玄関のドアを閉めて、そこで初めて携帯を開くと一通のメールが来ていた。
リョーマからだ。
受信メールを開けば、今日の朝練中止とだけ書かれてある文面。いつも以上にそっけないメールに、私は思わず笑って、電話をかけて近くの公園に呼び出すことにした。


「なんでこんな寒い中公園なんかに来なきゃ行けないわけ?」
『……なんでそんな怒ってんのよ』
「別に」
『嘘だ、絶対怒ってるもん』
「……怒ってなんかないし」


ぷいっと顔を背けたリョーマは明らかに機嫌が悪い。ニット帽を深く被りなおしたリョーマが小さくため息を吐いたのが聞こえた。


「で、さっきから何作ってんの」
『雪だるま』
「それ、まさか俺とか言わないよね?」
『……なんでバレた』


今度はあからさまに聞こえるようにして息を吐いたリョーマは私に手を差し伸べた。何この手、という顔をしていると軽く頭を叩かれて、雪を触っていた手をとられた。手から伝わるリョーマの温度がじんわりと私の中に解けていく。


「冷たい」
『だって雪触ってたし』
「知ってる。もう帰ろう」
『うん』


傘を広げて、二人並んで入れば、いつも以上にリョーマと近くてドキドキする。一つ歳を重ねるごとに大きくなっていくリョーマに少し泣きたくなる気持ちになるけれど、彼と今こうして二人でいることができるのが嬉しくてしょうがない。


「何、さっきから」
『ううん。やっぱりかっこいいなって思っただけ』
「……なに、それ」
『リョーマ好きだよ』
「知ってる」
『あ、聞きたいのはこれじゃなかったか』


ピタリと止まったリョーマはいつの間にか耳まで真っ赤だった。口元を抑えたリョーマを見ながらにやにやしてるとにらまれたが、全然そんなの効果がない。


『誕生日おめでとうって言って欲しかったんでしょ?』
「う、うるさいな!梓月ちょっと黙って」
『黙ってやんない。私がリョーマの誕生日忘れると思った?』
「梓月ならあり得るし」
『ひどいなぁ』


でも忘れてなくてよかった、なんて嬉しさを押し殺せていない顔で言うリョーマが愛おしくて愛おしくてたまらなくなって、不意打ちでキスをお見舞いした。呆然とした顔を見て、私は思わずふきだした。
ああ、幸せ。彼の誕生日を祝うことができたし、一緒にこうやって過ごすことが出来た。それもこれも、リョーマがこの世に誕生してくれたおかげ。


「ありがとう、大好き」
『私も』


また来年も一緒にあなたといれますように。誕生日おめでとう、リョーマ。
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