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こたつと言えば?


「『やっぱりみかん!』」


私と仁王は同時に叫んだ。なんだお前もか、というように二人顔見あわせ、同時に噴き出す。
こたつにみかんと言うものはきってもきれない仲だと私は思う。あったかいこたつに冷たいみかん、正反対の位置にいる二つだが、こたつで乾いた体を潤すのにみかんは丁度いいのだ。
一人暮らしの柳生の部屋にこたつが現れたと聞き、そのこたつに入りにきた私と仁王は、備え付けと言ってもいいみかんをもくもくと食べ始めると、いっきにみかんの香りがその場に広がる。柳生はというと、その様子を本から目を離してチラリと見て、大きなため息を吐いた。


「ここ、私の家なんですが」
『柳生の家は私の家、柳生のみかんは私のみかん』
「常識ぜよ」
「何が常識ですか梓月さん、仁王くん!あっ、こら!冷たい足を私の足にひっつけるのやめなさい!」
『ちぇー……柳生の足あったかいから好きなのに』
「梓月ー俺ん足は?ね、俺ん足」
『仁王は冷たいから嫌』
「……まーくん涙目ナリ」


わっと顔を覆った仁王になんだかいらっとして私はみかんの皮をぶつけた。仁王も仁王で、すっと真顔に戻って私にちぎったみかんの皮を次々となげてくる。
いい度胸だ、仁王。その挑戦受け取ったといわんばかりににやりと笑った私は、これはみかん戦争だ!なんて叫んで、かごの中のみかんを両手いっぱいに取り、私と仁王はむさぼり食い始め、そして食っては投げ食っては投げを繰り返した。


『あ、仁王それ卑怯!私のみかんの皮ひきちぎんなっ!』
「お前さんが投げるから悪いんですー」
『くっそ腹立つ!ああああみかんもう無い!柳生みかん!次のみかん!』
「やーぎゅ、もっと持ってきんしゃい。梓月を討ち取るのは俺じゃき」


かごの中のみかんがなくなった時、本をぱたりと閉じた柳生は机を思いっきり叩いた。うわ、柳生の手痛そう。そう思ったと同時に、私の頭と仁王の頭は柳生のげんこつによって大きくはれ上がっていた。


「痛いんじゃけど!」
『痛い!なにすんの!』
「なにすんのはこっちのセリフです!あなたたちさっきから何してるんですか!誰が掃除すると思ってるんですか!」
「『柳生』」
「同時に同じ答えを言わなくてよろしい!」


柳生の雷から逃れるために耳を塞いでこたつの中にもぐりこめば、そこで目があったのは仁王。驚いて痛いところをぶつけてしまって、同時にその場にうずくまった。最悪だ。


『痛い!同じとこあたった!仁王のバカ!』
「お前さんこそ!なんで俺と同じ行動しとるんじゃ!梓月のプピーナ!痛い!」
『やっぱり仁王だけは許さん!戦争だ!全面戦争!』
「受けてたつぜよ!」
「……ったく、ホントに、呆れて叱る気力もなくなりました」


涙目で再び言い合いを始める私たちを見ながら、もう一度大きくため息を吐いた柳生は、ゆっくりと立ち上がりキッチンに足をむけた。


Title by Light sky winterで10題
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