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「梓月さん、カルタしない?」
『へ?』
部活に関する資料を委員会の人に頼まれ、テニス部部室に持っていけば、同じクラスの葵くんを筆頭に、テニス部のみなさんににこやかな笑みで迎えられた。
葵くんは小学校からずっと一緒で、低学年のころはよく遊んでいた気がする。外で駆け回ったり、家の中を散らかしたり。
そして、葵くんはあの時と変わらない笑顔で冒頭の言葉をもう一度私に言った。
「今からカルタやろうかなって思ってて、どうせなら梓月さんもしていかない?」
『え、でも……』
「あ、ごめん!忙しかったかな?忙しいなら別にいいんだ!」
『いや、そういうわけでもないんだけど……』
「ん?」
『いや、カルタとか小学生以来だったから』
「あ、ああー……そうだよね、最近じゃほとんど見ないし。こうやって未だにやってるの僕らだけかも」
葵くんは手に持ったカルタをゆっくりシャッフルしながら、少しだけ寂しそうに笑った。確かに最近見かけない。未だにやってる高校生なんていないかもしれない。
「これ、一昨日僕ん家の倉庫でたまたま見つけたんだ。いやぁ、懐かしくってさぁ!思わず持ってきちゃったんだけど、一緒にやってくれそうなのテニス部のみんなくらいしかいなくて」
『そうだったんだ』
「やっぱカルタっていまどき古いし、それにこんなのやってたらモテないってわかってるけど、ね!」
『……久々にやってみようかな』
「え、ホント!?」
頷けば、葵くんは満面の笑みで私の手をとった。嬉しそうに、ありがとう、みんなも喜ぶよ、なんて言って、奥まで連れて行ってくれる。
葵くんの背中は昔と違って大きくなっていたけれど、その手のあたたかさはなんだか懐かしくて、きっと葵くんもこういう気持ちなんだろうな、と思うと、自然と笑みがこぼれた。
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Light sky winterで10題