▼ ▼ ▼

学校、行事、友達づきあい。なにもかも。全てめんどくさくて、あまり関わらないようにしてきた。別に一人でいても全然苦じゃないし、勉強もはかどるし、自分の時間も十分にとれる。だから寂しいとも切ないとも思ったこともなかった。放課後はすぐに鞄かついで教室を出て家路についてバイトに向かう。そんないつもの日常のはずだった。


『いらっしゃいま……あ』
「あ」


某ファミレスでバイトをしている私は入店音に反応して振り向けば、そこには見知った顔があった。白石蔵之介。クラスメイトだ。クラスメイトだって言っても、話したことがそんなにあるわけでもないし、ホント顔見知り程度だけれど。


『一名様ですか?』
「あ、おん……一名です」


ちょっと驚いたような気まずそうな顔をした白石くんを近くの席に誘導した。
しかしまぁ、なんでこんなところに。
実はこのバイト先、学校から結構離れたところにあるからだ。わざわざこんな遠いところまで来るなんて変な人だ。


「梓月さん、ここで働いとったんやな」
『あ、うん。家近いし』
「え、学校から遠ない?」
『遠いよ。でもいつも電車だし』
「せやったんか」


やっと和らいだ表情をした白石くんがおすすめは何?と聞いてきたので、季節限定パスタをお勧めした。これは私のお墨付きパスタだ。


『っていうか、白石くんもなんでこんなところに?』
「え」
『遠くない?』
「あー……まぁ」
『なんで?』
「なんでって……学校のやつとかあんまおらん、から?」
『なんで疑問形』
「えっと」


急に歯切れが悪くなった白石くん。どうしたんだろう。気分でも悪くなったのだろうか。水を持ってきてあげれば、白石くんはごくりと一気に飲みほした。そんなに喉かわいてたのか。


「俺、梓月さんと話したい思ってて」
『うん』
「んで、梓月さんがここでバイトしとるって噂で聞いて」
『ああ……それで』
「あーもうほんまごめん、俺めっちゃ気持ち悪いわ」


口に手をあてて真っ赤な顔で項垂れた白石くん。あ、うん。そうだったのか。なんだ。そうか。どうせ他人だって、どうでもいいって逃げてた私と違って、白石くんは逃げないで向き合ってくれる人なんだ。恥ずかしくなるほどに勇気を出して私に会いに来てくれた白石くんを見ていたら、なんだかとても自分が小さい人間に思えてきた。


『気持ち悪くなんかない』
「ほんま?」
『うん、嬉しい』


なんだかこんなに心あったまるのは初めてだなぁ。これが、友達の一歩か。めんどくさいって思ってたけど、なかなかいいものかもしれない。私も、白石くんみたいに変われるだろうか?今度は教室で白石くんに声をかけてみよう。もしかしたら、こんな自分を変える一歩になるかもしれない。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -