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『菊ちゃん』
いつもてんは俺のことを菊ちゃんと呼ぶ。なんでも名前で呼ぶのは恥ずかしいからだって。せっかくの彼氏彼女な関係なのに残念、なんて言うとてんはちょっと眉を下げて笑いながらごめんねと言う。それがまたかわいくてかわいくてしょうがないんだけど、でもやっぱり名前で呼んでほしいにゃーっていう願望があるわけで。
「ねーねーてんー」
『ん?』
「まだ俺のこと名前呼んでくんないのー?」
『えっ!?』
驚いた顔をしたあとすごく真っ赤になった顔を見つめながら、ちょっとだけにんまりと笑った。やっぱりかわいいなーたまんないなー。
「ね、呼んでよ、ね?」
『きゅ、急にそんなっ』
「急ってこともないじゃん?」
『そうだけど!』
「……だめ?」
ううう、と小さく唸って顔を伏せたてんは、ちょっとだけ顔をあげて、いじわるなんて言う。本人は睨んでるつもりなのかもしんないけど、そういうの逆効果なんだよなーあーもう。
「ほらぁ、早く早くー」
『えええ』
「俺もう待ちきれにゃいよー?」
『えええええ英二くん』
「ん?」
『……英二』
「よくできました!」
よしよしって頭を撫でたら、耳まで真っ赤になっちゃって。かわいすぎて思わず飛びついたら、びっくりされて殴られちゃった。