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は?え……は?意味わからん意味わからん。なんやこれ。なにが起こっとんねんこれ。誰やねん。いったい誰の仕業やねん。は?


俺の隣で女が寝とるんやけど。


どういうことやねん。最初は小春が女装でもして同じ布団に入っとるんかと思った。でも違った。ふわりとふれた髪の毛は明らかに作り物のそれとは違い自然なさわり心地で思わず全身が熱くなった。女は俺に背を向けとるけど、小春も小春で華奢な方やけどそれとはまた違う……なんていうか細いんやけど全体的に丸くてやらかそうな感触してそうで、これは絶対女やなって。
にしてもぜんっぜん覚えがないから困った。昨日そういや財前に付き合わされて飲まされたのまでは憶えてんねんけど。それ以降の記憶がぱったり。酔った勢いでそこいらにおった女捕まえてナニしとったとしたらもう取り返しつかなさはんぱないやんけ。


「お、おい……おい、起きんかい」


そっと触れた肩はやはりやらかくて思わず手ひっこめた。なんやこれ。女ってこんなやらかいんか。こんなやらかくて大丈夫なんか。


「は、はよ、起きんと死なすど……」
『ん』
「!」


俺の声に反応したのか短い声を漏らした女は目をこすりながらゆっくりふりかえった。あれ、この女は。


『あ、一氏先輩……おはようございますー』
「おはようさん……って、おはようちゃうわ!お前確か財前の……」
『そうです、財前くんのお友達です』


寝ぼけた顔でへらりと笑った女は梓月てんです、と名乗った。
そういや名前を何度か財前から聞いたこともあったし、確か中学校も一緒やったはずだから顔もなんとなーく憶えている。そんで昨日財前に飲みに呼ばれ、行った先には何故かこの女もおった。
……そんぐらいしか記憶にあらへんけど。


「っていうかお前なんで俺の布団に入ってんねん」
『なんでって……そりゃぁ』
「そ、そりゃあ?」
『寒かったから』
「な……なんやねんそれ……」


脱力した。あれ?なんか期待してました?なんてにやにやしながら言ったこの女の頭を思いっきりはたく。俺がなんかやったかと思ったやんけ阿呆。でも、なんもなかったことにほっとする反面ちょっと残念に思う俺がいて……ってなんやねん!俺そないなこと思ってへんぞ!変な方向に持っていくのやめれやほんまに!いやでも、ちょっとまたんかい。この女がここにおることに違和感おぼえないかん話やろ。初対面ではないもののそないに面識ない男の部屋に勝手についてくるはずもないやろし、これはあれやな……なんちゅーかきっと俺が悪い。


「すまんかったな」
『何がです?』
「な、なんでもないわ!」
『そうですか?……まぁ、なんていうか。私はなんかあってもよかったんですけどね』


そう照れくさそうに笑うこの女に、長年心に秘めていたらしい何かを感じ取った俺は、とりあえずちゃんとシラフでこいつと向き合おうと思った。
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