▼ ▼ ▼

彼女の手は何故こんなにも冷たいのか。
初めて手が触れたとき、そんなことをふと思った。
それは何気ない日常のもので、ものを取ろうとしたときにつと触れただけであるけれど、そのなんとも言えない冷たさに思わず手を引っ込めてしまうほど。

どうしてお前の手はそんなに冷たいの?
と、ずいぶん前に彼女に聞いてみたことがある。
そうすると彼女は、その顔に愛らしい笑みを浮かべて、さぁ何でかしら?ととぼけてみせる。
それがいっそうかわいらしく感じてしまい、思わず唇を重ねてしまいそうになる。
だけれどその冷たさゆえに、彼女の手に絡めるために伸ばした手を引っ込めざるを得なくなり、はっと我にかえってしまうのであった。

一緒に暮らし始めてようやくわかったことがある。
彼女はよくお弁当を作ってくれていた。
彼女の家に行ったり、自分の家に来た時も、彼女はなにかしらおいしいものを作ってくれる。
夏でも冬でも水を使わずにいられないのに気付いた時、彼女の手の冷たさの理由がなんとなくわかった気がする。
それと同時に、自分はなんと幸せものなのかと感じられずにいられなかった。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -