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「どう?見下ろされてる気分は」


口元がゆっくりと弧を描く。私を無理やり床に押し倒して、下腹部に腰を落としながら切原はそんなことを言う。
気分?そんなもの、最悪に決まってるじゃない。ふざけんな。
思いっきり睨み付けてやれば、かわいーなんて言ってきやがった。


「なんだそんな挑戦的な顔もできんじゃん」


切原は嬉しそうに笑いながら、私のネクタイを引っ張る。首が閉まって苦しい。


「このまま死んじゃう?」


死ぬ?こいつの手で?それだけは勘弁。こいつに殺されるくらいなら、自分で舌を噛み切って死んだ方がましだ。っていうかまだ死にたくないし。
ぎこちなく首を振れば、するりとネクタイを離されて、私は床に頭を打ち付けた。痛いっつの。


「あ、その顔好きかも」


相変わらず変な趣味。人が痛がる顔が好きとかホントどうかしてんじゃないの?どこかでネジ一本どころか何本も落としてきたんじゃないの?息がまだ届かない頭がぐらぐらする。


「早く俺のもんになってよ」


いつの間にか頬にのばされていた手を勢いよくはねのければ、その手を掴まれて、指先に何度も唇を落とされた。ぞわぞわと這い上がるような寒気が気持ち悪くて吐き気がする。なんでこんなやつに好かれてしまったのか。なんでこんなやつに目をつけられてしまったのか。


「梓月だって俺のこと好きなんだろ?」


よくもまぁいけしゃあしゃあと。憎々し気に見上げればそれはそれは美しい笑顔で私に唇を落とした。
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