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「ほんまに好きなんやけど」


突然言われた言葉になんと答えればいいかわからない。
白石蔵之介はただのクラスメイトであり、ただのたまたま隣の席になっただけの普通の友達であったはずだ。だというのに、教室の入り口をふさぎ、目の前に立ったこの男はそれを許してはくれないらしい。


「なぁ、梓月は、てんはどうなん?」


いつもは名前で呼ばないのに。後ろ手にドアの鍵を閉められて、じりじりと私を壁においつめる。顔の横に白石の少し力の入った手が置かれたとき、私は壁づたいにずるずると地面に崩れ落ちた。


「腰砕けるほど俺のこと好き?」


私を見下ろす白石の目は、うっとりとしていて、口元には笑みがひろがっている。いつもと違いすぎて、ただただ怖くて。だけど彼の目から目をそらすことができなくて。その怯えた表情もなかなかええなぁ、なんて言う白石にぞわりとした。


「自分の知ってる俺やないみたいな顔やな」
『し、白石……』
「でも残念、本当の俺はこっちなんやで」


私の足の間に入ってきた白石は私の耳元の髪をすきながらそんなことを呟く。するりと滑ってきた指が私の唇をゆっくりとなぞった。


「てんにずっと触れたい思ってた」


唇を離れた白石の指は首筋をなぞってくだっていく。


「こないな日来るとは思ってへんかった」


嬉しそうにカーデのボタンをはずしていく白石の手を止めようとしたけれど、その手は白石に掴まれ口づけを落とされる。白石の唇は熱くて、その熱にうかされてしまいそう。


「なぁ、……名前呼んでくれへん?」


唇を髪に何度も落としながら苦しそうに言う白石に、小さく蔵之介と言うと、白石は満足げに笑った。それはもうぞっとするほど美しく。
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