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「触って」


突然目の前に現れた幸村は、仁王立ちしながらこんなことを言い放った。しかも教室のど真ん中で。悲鳴じみた声が周りから聞こえて、女子たちの目がぎろりと私に向けられる。ひいい怖すぎる!いたたまれなくなった私は幸村の服の裾を引っ張って教室を出、屋上に向かった。その間も幸村はずっと触って触ってと子供がだだをこねるように言う。


『いきなりなんなの幸村』
「だから俺に触って」
『なんで?』
「触ってってば!」


もうなんなの。意味が分からない。そう思いつつ、仕方なく幸村の手に触れた。すると幸村は私の手を握り返してそのまま幸村自身のほっぺたに私の手を添えさせた。綺麗な顔。間近で見た彼の顔はとても整っていて、まつ毛も女の私より長いんじゃないかってほど。


「お前今俺のこと綺麗とか思っただろ」
『えっ』
「やっぱり」
『だって綺麗だし』
「女みたいだって思っただろ」


ああ、わかった。それで、触ってなんて言いだしたのか。
幸村は綺麗だし、女の人と見間違ってしまう人もいる。でもそれはきっと彼にとってコンプレックスでしかない。そして今日もきっと誰かに女みたいなんて言われたんだろう。


『確かに女みたい』
「てん!」
『でもさ、この大きくてあったかい手だとか、私よりはるかに高い身長だとか、部員を束ねる姿だとか……さ、私は誰よりも男らしいと思う』


幸村は大きく目を見開いたあと、すぐに目を伏せてちょっとだけ笑った。


(じゃあもっと男を見せてあげるよ、とか全開の笑顔で言って近寄って来たからとりあえず殴っておきました。)
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