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いやーなんという快晴。清々しい朝だね、越前くん。
きらきらと眩しい窓に背を向け、越前くんにあいさつをすると。眠たそうな目をこすりながら変な顔をされた。
「朝からなんなのそのキャラ」
『だってこんなにいい天気なんだもの』
「……意味わかんない」
朝早くから朝練のあるテニス部。マネージャーである私も例外ではなくこの朝練に参加するべく早々とテニス部部室にやってくる。昨日も早く寝れたおかげか、すっきりと目覚めもよくって、なんだか気持ちがいい。足取りやや軽く、スキップでもしたくなる気持ちを抑え、ボールをカートに乗せてコートに持って行く。ゆっくりとした足取りで部室を出てきた越前くん、は私の後ろを歩いていた。
『あ、そうだ越前くん』
「……何」
『まだまだ眠そうな越前くんにおすそわけ』
だぼだぼのジャージのポケットからポンタを取り出して越前くんに放り投げる。びっくりした顔の越前くんはなんとかそれを受け取ってくれた。
「いきなり投げないでよね」
『あははごめんごめーん』
「……さんきゅ」
『どういたしまして!』
「うわっ」
ぷしゅうという大きな音とともにあわがあふれたポンタグレープ。ありゃりゃ気づかないうちに振っちゃってたのか。素晴らしい反射神経のおかげか汚れなくってすんだ越前くんはうらめしげに私を睨んだ。
「嫌がらせ?」
『違う違う!』
「梓月が優しいとか変だと思ったんだよ」
『なにそれひどい!』
「ま、ホントに目が覚めたからいいけど」
にっと笑った越前くん。
珍しいもんを見ちゃった。猫でも降ってきちゃいそうな勢いだけど、やっぱり今日は最高の一日になりそう。