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『私さぁ、好きなんだけど』


はぁ!?と思わず大きな声が出た。
危ない危ないここ教室だった。こいついきなり遠い目しながら何を言ってんねん。
一気に上昇した体温を冷ますために近くにあった下敷きであおぐ。


『だからさぁ、私好きなんだけど』


飲もうと思ったペットボトルを思いっきり足の指の上に落とした。くっそ痛い。一人静かに身悶えていると呆れた顔で梓月に見下ろされた。


『何してんの謙也』
「べ、別に何もしてへんし!」
『何で急に声荒らげんの、うるさい』
「なっ、そもそもお前が変なこと言い出すからやろ!?」
『別に変なこと言ってないじゃん。好きなんだけどとしか言ってないじゃん』


確かにそうか。なんて急に頭が冷静になったけど、いやいやだから何が好きなんだよ、という疑問がふつふつ湧き出してまた体温が上がってくる。
紙パックのジュースを音を鳴らして飲む梓月は窓の向こうを眺めて大きなため息を吐いた。


『謙也って恋愛ごとに関して鈍そうだよね』
「そないなことあらへんし」
『いやいや、そういうところが鈍い』
「バカにしてんなや!」
『別にバカにしてるわけじゃないし。ただちゃんと言わなきゃわかんないかなって思ってるだけだし』
「は」


曖昧に言う私がバカでした、なんて言って梓月は俺の方に体を向けた。気づかなかったけどその顔は真っ赤で、ああそれでそっぽ向いてたのかなんて思った。


『だから、謙也が好きなの、このにぶちん』
「……にっ、にぶちんは余計や」


ああもう俺もなんでそんな可愛げないこと言うんやアホやろ俺。こんな時は俺も好きやって言葉だけでええのにほんまに俺アホ。ダメやダメや。言葉にするからあかんのや。こういう時はやな。


彼女をそっと抱き締めた。


これが正解なんや。
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