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あー無理、無理だわ。もう無理。
『桃ちゃん先輩おぶって』
「なんでだよ!」
だってですよ?飲ませたのは桃ちゃん先輩じゃないですか。嫌がる私を無理やりつれて飲み屋に入ったのは誰です?ただその場を通りかかっただけなのに、ひっぱってここまで来たのは誰です?ジュース頼もうとしたら阻止されてお酒頼んだのは誰です?
「そうでした。すいませんでした」
『よろしい』
ああ、もうなんかむかむかするうえっぷ。歩くのつらいし、ふらふらするし。だからおんぶ。お姫様抱っこと言わなかっただけマシと思ってくださいよまじで。
「あーもうおぶればいいんだろ!?ほら、早く乗れ!」
『ん』
首に手をまわせば、急にぐいっと視界が変わった。
ほへー桃ちゃん先輩の世界ってこんな風に見えるんだ。
ネオンがきらきら煌めいて、風も少しだけ冷たく感じる。
「おい」
『……』
「寝たのか?」
『寝てないですよ』
「んだよ、びっくりさせんな。急に大人しくなるなよなー」
『せんぱーい』
「おーなんだー」
『先輩の背中ってこんな大きかったんですね』
「まぁ、伊達に後輩引っ張ってきたわけじゃねーよ」
『こんな素敵な先輩に引っ張ってもらえてうらやましい』
「何言ってんだよ、お前も俺のかわいい後輩なんだぜ?」
あ、そっか。私後輩だった。そう言えば、お腹抱えて笑われた。ちょっと先輩落ちる落ちる怖い!
「ま、自覚してないってことは不十分だったってこったな」
『きっとそうですね』
「お前も言うようになったなー!まぁ別に一生引っ張ってやってもいいけどよ」
『へ』
先輩の横顔はどことなくお酒のせいだとしても赤くて、いっそこのまま私も先輩に落ちちゃってもいいのかななんて。