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「きゃーっ!」
「跡部さまよー!」


女子の集団が目の前を通り過ぎていく。
はいはい今年も恒例の跡部さま誕生祭のようですよ。学校につく前からどこか女子たちはソワソワしていて、校内に入ったのはいいけど、ソワソワどころの問題じゃなかった。女子として今まで嘘でも培ってきた品格はどこへ?と世間が疑問を持ちたくなるほどのひどさ。これも3年目となると慣れてきたっていうか、呆れてきたっていうか。


『お疲れ、跡部』
「は、はぁ、はぁ……もう行ったか?」
『第一群は右に曲がったみたいだよ』
「そ、そうか……」


ぐったりと壁に寄りかかって息を整える跡部はさっきから女子の集団に追いかけられ、逃げている途中みたいだ。
大人しく捕まって大量のプレゼントいただけばいいのに。もったいない。彼女たちも暇じゃないんだから、跡部のためにない時間絞ってプレゼント用意したんだろうし。
受け取れば?って聞いたことがある。それに対して、跡部は確かにありがたいが追いかけられるのはちょっと……という感じらしい。ぜいたくもんめ!こんな経験できるのきっと跡部ぐらいじゃねーの。ほら、そこにいる男子うらやましそうにこっち見てるし。
とりあえず跡部を落ち着かせるために鞄から水を取り出して跡部に差し出した。


『水飲む?』
「ああ……すまないな」
『それ飲みかけだけどね』
「ぶはっ」
『あはは!跡部がふいた!』


むせた跡部の背中をさすれば、ぎろりとにらまれた。いやいや跡部に感謝される覚えはあっても、にらまれる覚えはないから。
とりあえず跡部も落ち着いたことだし、私はもう解放されてもいいよね?いきなり連れて来て巻き込んだのはそっちだし。私自身は追われてないし。そう思って立ち上がろうとすると、制服のネクタイを掴まれそのまま引っ張られたと思えば、目の前には跡部の顔。私の唇に自分の唇を押し当てて目を伏せた跡部が、うっすらと目を開けて私に笑いかけた。それがあまりにも綺麗すぎて、なんかこの世のものとも思えなくて。


「誕生日だしな……お前ならもらってやってもいいぜ?」


なんという事後報告。そんなこと言われたら、もらわれるしかねーじゃねーの……。
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