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『さっむ!なにこれ今日めちゃくちゃ寒い……なにしてんの』
「え?やだなぁ、わかってるでしょ?」


9月も後半朝練のため学校に向かったのはいいが、いかんせん寒い。さっさと部室に入ろうと急いでドアをあけたら目の前に両手を広げた幸村さんがいた。しかも満面の笑みで。


「野暮なこと聞くなんてさぁ……それとも言って欲しいの?」
『や、もうなんかいいよ……』
「そう?じゃあ、ほら、はい」


両手を広げたまま幸村さんは私に一歩一歩距離を近づけてくる。
え、なにこれ怖い。
私も自ずと後ろに下がるけれど、すぐさまロッカーにぶつかった。その間も幸村さんは私に近づいてくる。


「つーかまえた!」
『!?』


捕まる!?と思った瞬間目の前が真っ暗になった。しかもなんだか温かいし。えっえ、なにこれ。驚いてわたわたして、やっとの思いで顔を出したら目の前には幸村さんの顔があって。ふいに、耳元でまだ寒い?なんて笑いを含んだ声が聞こえた時、ようやくジャージごしに抱きつかれていることに気付いた。


「これ着てなよ」
『えっ』
「やだとは言わせないよ?」


そうにっこり笑って幸村さんは朝練のために部室から出て行った。
その日、いつもの肩ジャーでなかったために部員全員から不吉の前兆かと思われたというのはまた別の話。
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