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『向日ー?がくとくーん?がっくーん?』


さっきからこんな調子で声かけてるのに、向日岳人は隣の席の私を総無視し、ふくれっつらでそっぽを向いている。
私何かしたっけ?
心当たりもないまま、それに聞くこともできない状態も続いてかれこれ3日がたとうとしている。


『ねー向日ー……私何かした?』
「別に」


あーもうほらーまたこの「別に」攻撃。なにが「別に」だよ。全然「別に」じゃないじゃん。明らかになんかやらかしたんじゃん私が。もうやだよーこんなのやだ。はっきりしない。もやもやする。はぁって大きなため息をはけば、向日が私を睨み付けた。


「バカてん!ため息はきたいのはこっちなんだからな!」
『なっ!』
「俺に誕生日を聞いてきたのはどっちだ?お前だろ?クソクソ!人がせっかく教えてやったのに、忘れてるとはどういうことなんだよ!誕生日迎えて一人でそわそわしてた俺めちゃくちゃ恥ずかしいやつじゃん!とんだぬか喜びだぜ!」
『え……』
「なんだよ」
『向日それで怒って』
「なんかわりぃかよ」
『ぷっ』


なんだこれ、なんだこれ。一人で悩んだ私がバカだった。あーあもうだめだ、笑いがとまらない。だってそうでしょう?向日の誕生日を忘れるなんてそんなこと。まさかこの私が向日の誕生日忘れるわけないじゃない。当日だって渡す気まんまんだったよ?でもそれを許さなかったのは向日じゃない。まわりを女の子でかためちゃってさ。あーあ、やばいなぁ。嬉しすぎてにやにやする。何笑ってんだよ、って顔真っ赤にして怒る向日がかわいくてたまらない。


『つまり向日は、私に誕生日を祝って欲しかったんだね?』
「う、うるせーぞてん!」
『はいはい』
「クソクソてん!なめやがって!」


どうせ照れ隠し。私の襟をつかんで揺らしてくる向日に笑いがとまらない。とどめの一発に当日渡しそびれたプレゼントを向日の胸に叩きつければ、ぽかんとした顔の向日が顔を真っ赤にしたままどっかに逃げ出したので、私は携帯のカメラを起動して追いかけてやりました。
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