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「やぁ、梓月」
『……帰って』


ったく、今日私熱があるって何度も言ったよね?ひっきりなしになる着信音と受信音にいらいらしながら、電話に出て今日は無理だってはっきり言ったのにもかかわらずこうやって玄関に立つこいつはどういう神経してるの?
口元に手をあててクスクスと笑っているところを見ると、完全にこいつからかいに来ただけだなってすぐわかる。


『淳何しに来たよ』
「んーお見舞い?」
『なんで疑問形なんだよ』
「あ、ほら、ちゃんとお見舞いの品だって買って来たんだよ?」


そう言って手に持っているビニール袋をこれみよがしに見せてくる。家に入れろってか。それは大変うれしい心遣いだけど、今ぶっちゃけ本気で熱にやられてる。こうやってるのもつらくて、ほら、だから意識が遠く……。


『しまった、気が緩んだ』
「へぇ、梓月の部屋って意外ときれいなんだね」
『物色すんな』
「あ、タンスだ」
『ぎゃあああそこはやめろおおお!』


玄関で意識を失いかけた私を持ち上げて、淳は二階まで連れてきてくれた。それはありがたいことなんだけど。タンスに近寄って行った淳は、私を振り向いてにやりと笑った。静かにしてないとまた倒れちゃうよ?なんて言ってにやにや笑いやがってちくしょう。こいついつかぶん殴る。そう言えば、梓月にそんなことできるかなーとか馬鹿にしやがって。私はやるからな。本気でやったるからな。


「あ、そういえばこれ」
『無視すんなよ!』
「梓月の大好きなプリン買って来たんだけど、いらなかった?」
『い、いるし!貰うし!食べるし!』


淳が私の目の前でプリンをちらつかせる。それは噂に聞く限定10個しか発売されないというまぼろしのプリン!?貴様それをどこで、と聞けば、とあるツテからなんて言いやがったけど絶対祐太脅したな。いや、祐太には悪いけどこのさいそれはどうでもいい。食べれないと諦めかけてたあのプリンが目の前に……!持ち前の反射神経でプリンをつかみ取ろうとすれば、淳の手によって阻止された。なにこいつなんなのこいつ。


『なんで!?くれるんじゃないの!?』
「どうしようかなぁ」
『どうしようじゃねえ!ちょうだい!』
「梓月の態度による」
『な、何が言いたい』
「もっとかわいくねだったらどう?俺好みにしたいんだったら色っぽくだけど」
『ばっ』
「いらないの?」
『あ、淳の馬鹿……ちょうだいってばぁ……!』
「!」


急に動きが止まった淳の手からプリンを奪い取れば、待ちに待った幻のプリンが。備え付けのスプーンを取り出していざ食べんとすればまたもや淳に阻止された。ほんっとこいつなんなの!?


「ああもう反則。梓月反則だから」


顔を手で押さえてちらりと私を見つめる。反則って何。私何もしてないんだけど。はぁ?って顔してたらいつの間にか私の手の中にあったプリンとスプーンは再び淳の手の中にあった。そして再びあの意地悪い笑みを浮かべた淳は、プリンを乗っけたスプーンを自分の口の中に入れて。気づいた時には淳の顔が目の前にあって。


「だから、お仕置き。どう?プリンの味は」
『……ぜんっぜんわかんない』


そう言えば再び近づいてくる淳。ばーか!くっそ甘すぎだっての!



(今度から俺がお見舞い品だねクスクス)
(もう結構です)
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