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打ち寄せる波をじっと見つめて、私、平古場くん、甲斐くんの三人は白い砂浜に腰をおろしていた。
どこまでも続く水平線に、透き通った碧い海。
真っ青な空もあいまって、私はぐんと沖縄を感じた。
ぽけーっと何をするわけでもなく眺めていると、ふいに隣に座る平古場くんが口を開けた。


「なー」
『あー?』
「海見てるとこの広大さに何もかも忘れてしまうやっさー」
『あー』
「てん聞いてる?」
『聞いてる聞いてる、だから安心して続けたまえよ、平古場くん』
「え、なんで上から目線やし」


じっとりとした目線さえも打ち消すくらいに清々しい景色を眺めて、本土に居た時はこんな晴れやかな気持ちになったことあっただろうか、そんなことを考えた。
多分、いや、絶対にない。
お受験や、女子間の抗争、陰湿ないじめ……そんなものが当たり前のように蔓延っていた前の学校とここは全く違う。
みんなこの自然の中、のびのびとうちなー時間を過ごしてきたんだなぁ、と常に思ってしまう。
それほどみんな、優しくて、おおらかで、くだらないことを全て包み込むようなあたたかさを持っている。
友達と一緒にこうやって、話すこともなくただじっと景色を見つめるなんてこと今までなかった。
心を許してるわけでもなくただ適当に話をあわせてるだけの相手とファーストフード店には何回かいったことはあるけれど。
やっぱり窮屈で息をするのも苦しくて、全然楽しくなかった。
でも、本土から転校して、比嘉中に入って、自分の中での友達という概念が変わった気がする。
それもこれも、平古場くん、甲斐くんと出会えたおかげなのかもしれない。


『あー……青春だねぇ、甲斐くん』
「えっ、おっ、おう!」
『このひんろい海に比べてなんてちっぽけなんだろうね私達は』
「いきなり何言ってるやがや」
「あはは!いきなりポエマーかや、てん」
『ポエマーにもなりたくなるよ……ホント綺麗だね、私沖縄に来てよかったなぁ』
「だーかーらー!言ったあんに!わったーと仲良くすれば楽しい楽しい学校生活おくれるさぁって」
『そうだねぇ……平古場くんと甲斐くんと仲良くなって、こうやって三人で海にこれることができて、本当にうれしい』
「ぬーがや、てん、今日はやけにしんみりやさぁ」
『別になんでもないよ、ただ思ったこと言っただけ。この広い海を前にして、素直にならざるをえなかっただけのことだよ』
「なっ、いきなりずるすぎやし!てん!わんもてんに出会えてよかったやっさー!」
「やったーずるい!出遅れたやし!」
『あはは!あーもー二人とも大好きだ!』
「わんも大好きさぁー」
「わんもわんも」

『……いつもありがとう』

そう目を伏せて言うと、隣で二人が笑った気がするなんとなく。
なんだか急に恥ずかしくなって、膝に顔を埋めれば、もっと笑われた。
でも、やっぱりそんな彼らがあたたかくて大好きだ。
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