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『ばっっっっかじゃないの!何これ!』


って怒鳴りたくなるのも、それもこれも全部この向日岳人のせいだ。当の本人は私を見てゲラゲラと腹を抱えて笑っている。くっそ忌々しい。


「あはは!まっじ最高!傑作じゃん!」
『おいこら向日お前まじ憶えてろよ』
「悪役の捨て台詞かよ」


あーもうホント最悪!
ただでさえこんな暑い中、補習があってめんどくさい学校に来てて最悪な思いしてんのにさ。いきなり教室に現れた向日に手をとられ走ってつれられて来た先は学校の誰もいないプール。青々とした水にごくりと喉をならせば、後ろから向日に突き落とされて。今の状態全身ずぶ濡れ。なんだこれ。


「どうよ、プールに飛び込んだ感想は?」
『服がはりついてめっちゃ気持ち悪いわ!』
「ざまぁみやがれ!」


ざまぁとか何。私なんかこいつにしたっけ。敬われるようなことはしたけれど恨まれるようなことなんて何一つしたことないんだけど。寧ろ私がこいつを突き落としたいぐらいなんだけど。もうホントどうすんのこれ。着替えなんて当たり前にあるわけでもないし。下着までびっちょびちょ。


『これじゃ補習でれないじゃんか』
「だから救ってやったんだよ」
『はい?』
「お前補習嫌って言ってたじゃん。だからこうやって水浸しになったら帰れるだろ?ほら、早く!ありがとう、って言ってみそ?」
『意味わかんねぇ』
「いや分かれよくそ梓月」


無理がある。確かに私は向日に補習は嫌だって愚痴をこぼしたよ。でもさ、だからってさ、ここまでする必要性ないんじゃないの。どうすんのこれ。どうやって帰ればいいの。っていうか先生になんて言い訳すりゃいいの。あーなんか考えるのすらめんどくなってきた。
プールにぷっかりと浮いて目をつむる。
まぁこうしてれば気持ちいいし、なんかはりついてくる服も気にならなくなってきた。ばっかみたい。ホントバカらしくてなんだか笑えてきた。


「くそくそ!何一人で楽しんでんだ!」


不満そうな声で叫んだと思ったら、水しぶきが顔にかかって驚いて目をあけると、隣にはちょうど水中から顔を出した向日がいた。
なにしてんのこいつ。こいつまでプールに入る意味がわかんないんだけど。


「梓月よりうまく浮かんでやる」


何をむきになってんだか。あーもうほんっとおっかしいの。笑いが止まらないや。
あとで先生とか親にこっぴどく怒られるだろうけど、もうやってしまったもんはしょうがないよね。今は思う存分楽しんどこ。


(梓月!シンクロしよーぜ!)
(え、向日と同調とか無理遠慮する)
(くそくそ!そっちのシンクロじゃねえ!)

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