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「何やってるんですか、梓月さん」
『いや……髪の毛さらっさらだなって思って』
「気安く触れないでください」
『ケチんぼ』


日吉にいらっときて顔を背ければ、頭をはたかれた。痛い。こいつ何してくれちゃってんの。女の子の頭をばしばし叩いていい道理はない。そう言えば、先輩を女と思ったことなんてないとか言われた。私こいつの先輩やめたい。


「梓月さん」
『……』
「……昼休み、一緒に楽しそうに話してた人誰なんですか」
『……』
「急に無視ですか」
『日吉がいけないんだよ』
「なんでそうなる」


袖を軽く引っ張ってくる日吉に内心笑いたくてしょうがないけれど、それをなんとか抑える。相手してもらえないと分かるとこうやってすり寄ってくるんだから、ホントかまってちゃんだなぁ。都合いいよまったく。そんなところがかわいくて好きで、ついつい意地悪したくなっちゃうんだけどね。


「こっち向いてください」
『嫌だし』
「梓月さんふぜいが俺に意見なんて調子に乗らないでください」
『その減らず口をどうにかしない限り日吉の顔なんて見ない』


ああ、うそうそ。今にでも見たい。その不安げな顔真正面から見つめてたい。だからほら、はやく言ってよ。日吉の口から、私は聞きたいんだ。


「梓月さん」
『何』
「その……」
『だから何』
「す」
『す?』
「す……きやき食べませんか」
『はああ?』


意味わかんない。なんでここでぼけるかな!かわいいなちくしょう!耳まで真っ赤にした日吉がもうなんか愛おしくて愛おしくてしょうがないし、私もそろそろ限界だから、日吉お手製のすきやきで手を打って、今日は勘弁しといてあげよう。
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