5第五次シチュー事件簿

今日の朝ごはんは昨日の残りのシチューだった。

昨日はあの後、家に帰ると、マミーがシチューを用意して待っていた。正直焼き芋でお腹が膨れてしまった私にとって、このお母さんの選択は最高のものだった。
シチューならば、あまり食べなくてもごまかせることができるし、ね。それに、なんだか、昨日は、食欲がそんなに、なくって。
再び全身の血が沸騰しそうになって、私は頭を振った。柳先輩のせいだ。全部全部。柳先輩が変なことするからいけないんだ。


「今日は何も食べていないな」


急に声をかけられて変な声が出そうになった。
いつもの特等席である非常口で、私はまた先輩に声をかけられた。昨日のことが頭の中で再生されながら、柳先輩を見ると、柳先輩はテニス部のジャージ姿だった。間近で柳先輩のジャージ姿なんか見る機会なんて今まで無かったから、まじまじと見ていると、柳先輩は少しだけ口角をあげた。


「珍しいか?」

『テニスコートの周り、いつも人だかりあるから』

「見ようと思ったことがあるのか」

『まぁ、一応、この学校の有名人たちがいるわけですし』

「……」

『?』

「それはそうと、白瀬が何も食べていないなんて珍しいことがあるものだな」

『失礼な……ちゃんと食べてきましたよ、先輩の言いつけどおり』


先輩は、私の頭に手を置くと、わしゃわしゃと撫でて、偉い偉いなんて言う。
子供扱いして!
むっとして睨み上げても、先輩は受け流して、今日の朝は何を食べたんだ、なんて聞くから、私はシチュー、とぶっきらぼうに答えた。
シチューとパン。私の朝食。ちなみにシチューは二杯おかわりした。
おかえり私の食欲。


「シチューか、いいな。シチューごはんはうまい」

『シチューごはん?先輩もしやごはん派』

「白瀬お前まさか……パン派か」

『シチューをごはんにかけるとかありえないです』

「パンはありきたりすぎる」

『パンのがおいしいですし!』

「いや、ごはんの方がおいしい」

『シチューとご飯なんて白すぎて気持ち悪いじゃないですか!』

「ほう、白瀬ゆき、この柳蓮二に喧嘩を売るとはいい度胸だ」

『パンだけは譲りません!』

「ごはんだけは譲らない」

『パーンー!』

「ごはんだ」


今日、初めて柳先輩と喧嘩した。
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