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「こはっ」
『小春ちゃーーーん!』
「はるちゃあん!」
「おい!小邑何してくれんねん!俺と小春の逢瀬邪魔すな言うたやろ!」
休憩スペースにつくと、あらかじめ席をとっていてくれたらしく、私は小春ちゃんに連れられてそこへ座った。
隣からひしひしと伝わる一氏オーラを完全無視して、既におにぎりを貪ってる謙也に、どんな感じだったのか聞いてみた。
「まぁ、こんなんあるんかーぐらいなもんやろ」
『どのくらい聞いたの?』
「俺は6社くらいやけど」
『え、そんなに』
「6社言うても、こいつの場合コミュニケーションカードだけ出しとったやつもあるけどな」
「それも手やって先輩言うとったんやもん」
『どうせ、謙也の場合、何十分も座っとくの無理だったからでしょ』
「うっ」
「ちなみに俺は無駄のなーいスケジュール管理で5社くらいいけたわ」
『流石無駄嫌いの白石』
「私も蔵リンとだいたい一緒かしら」
「俺もやな」
ふうん。結構まわったんだなぁ。
でも理系ブースってそんなに広くなかったから、まわりやすかったのかも。
文理不問だと、いろんな職種あるし、スペースも広いし、一氏も私と変わらないくらいだったし、こんなもんだよね。
「ちゅーか小邑その資料の量どないしたん。鞄からはみでとるで」
『道行くお姉さまとお兄さまから少々……』
「にしてももらいすぎやろ。無駄やで」
『む、無駄言うな!ちゃあんと企業研究に使わせてもらいますう!』
「クリアファイルは役にたつからもろたけどな」
「私はバインダーもらったわよん!」
「俺化粧品もろたわ」
『なんで一氏が化粧品をもらってんの』
「モノマネで使えるかな思うて」
『なんだ……女装趣味でもあるのかと』
「あほ言うな死なすど」
とかなんとか言っている間に、お昼もだいぶすぎていたらしく、再び説明会も賑わい始めていた。
私は一氏無視を決め込み、あらかじめ持ってきていた菓子パンをたいらげ、席をたつ。
さぁ、階下の戦渦に戻ろうと踏み出した時だった。
私は、急な階段に慣れないヒールをひっかけた。
コミュニケーションカード:企業に提出する自分の情報が書かれた用紙
クリアファイル、バインダー、化粧品など:説明を受ける際にもらえる時もあるノベルティ