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押し寄せる黒い波が、緑色の床をどんどん埋めていく。
いよいよ開場した、たこナビLIVE2013。
四角く区切られたブースにどっと人が入っている。
少し肌寒い会場内だったが、私はマフラーをとって鞄に放り込んだ。
メモ帳よし。筆記用具よし。クリアファイルよし。会場MAPよし。
事前に来る企業を調べた人だろう人は、方々へ散って、自分の行きたいブースに向かって迷いも無く歩いていく。
『こんなことなら事前に調べておくんだった』
なんて項垂れる私とは大違いですね!
どこに何があるのか把握できないまま、なんとなく知ってる企業のブースに入る。
謙也も白石も健ちゃんも小春ちゃんも、理系LIVEに行くとか言って早々にいなくなっちゃったし、一氏もなんだかんだで、決めてた企業があるっぽくて、散々私をバカにして去って行った。
ああ、もうどうにでもなれ精神の私とは大違いでしたね!!
だからと言って、なんとなく入った企業でも、おもしろそうなところがあるかもしれないと思うと気が抜けない。
メモ帳とペンを引っ張り出して、メモをしていく。
時には立ち見していて出ようと思っても周りを固められて出られなくなったり、文理不問でもなんだか理系の話されてるようでいつの間にか理系LIVEにまぎれこんでいたのかと不安になったり、社員さんの笑顔に断りきれなくて大量の資料をもらったり。
それを何度も何度も繰り返していくと、なんとなく慣れてきた気がした。
ぐるぐると同じところを歩いてたり、いまいち自分がどの位置にいるのかは結局把握できなかったけれど。
ある程度ぐるりとまわって休憩していると、セミナーが終わったらしい一氏と出くわした。
「よぉ、小邑やんけ。どんぐらいまわった?」
『うーん3社くらい』
「そんぐらいやんな」
『うん、午前中は流石に無理だわ』
「ブースでも30分、60分くらいやってるとこあるしな」
『一氏はどんぐらい?』
「セミナーあったし、まだ2社やな」
なんだか、また急にどっと人が入ってきた気がする。
友人に聞いたところによると、結構他県からも来てるみたいで、もしかしたら彼らが遅れて入ってきているのかもしれない。
壁側にぴったりと背中をつけながら、顔だけ一氏に向ける。
「小邑地元就職希望やろ?」
『一応ね、でもあんまり来てないみたい』
「午後はどうするん?」
『まわりたいところまだ一応あるし、時間余ったらふらふらっていろいろ見てみる。一氏は?』
「俺もまわりたいとこもうまわったんやけど、適当にふらつくわ」
『お昼どうする?』
「今から休憩スペース行こう思ってる。小春もそこにおるらしい」
『そっか。私も行こうかな』
「邪魔すな、死なすど」
『邪魔しねーし』
携帯をポケットから出すと、何件かのライン通知が来ていた。
謙也に白石に健ちゃんに小春ちゃん。みんな休憩スペースにいるみたい。
よりいっそう増えた就活生を、一氏を盾にしながら、かきわけて、私たち二人は休憩スペースに向かった。
たこナビLIVE:たこナビが主催する合同説明会
理系LIVE:たこナビLIVE内に設置された理系学生専用のブース