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「あーっほんまにつかれた!」


ぐんと伸びをし始める謙也に、私も、と同じように伸びをした。
一通り聞き終わった私たちは、閉場時間も近くなってきたため、会場を後にすることにした。
時間と場所だけをなんとなく決めて、だらだらと集まってきたみんなと、だらだらと外に出る。周りの人たちも同じ考えだったようで、帰る支度を始めていた。
相変わらず雨はぱらぱらと降っていたけれど、傘をさすほどでもなくて、億劫がっていたら、白石が傘の中に入れてくれた。ありがたやありがたや。
謙也もその中に入ってきてぎゅうぎゅうでせまかったけど。


「小邑は地元企業ええのみつかった?」

『まぁまぁかなあ』

「来てないとこ多かったけんね」

『今度地元でも合説あるから行ってみる。千歳は行くの?』

「悩みちゅう」

「二人とも大変やな」

『まぁ、勝手に私がこっちの大学来ただけだしね。ちゃんとした帰省もできてないから、それついでに合説も行ってみるよ』

「えらいえらい」

『あ、白石バカにしてるでしょ』

「まさか」


ぐしゃぐしゃと頭をなでられて、せっかくセットした髪の毛も水の泡。
でも、まぁ、とりあえず今日は終わったからいいか。
朝集まった場所に再び戻ってくると、それぞれ自分の家へと帰っていった。
私も帰ろう。
びっしりと資料がつまった鞄に、疲れた体をひきずって、電車に乗れば、あたたかい座席にうつらうつら。隣に座った、同じ就活生らしき人ももうつらうつらしていて、やっぱりみんなこうなんだ、とか思いながら。
今日の敵は、今日の友。
明日の友は、明日の敵。
私は彼らと戦っていかなければならないんだ。
今はまだ始まったばかりで、皆同じくらいの立ち位置にいるけれど、ここで疲れたからと言って適当に過ごしていたら、きっと、彼らに取り残されてしまうんだろうな。
なんだか自分のヤル気にスイッチを押すいい機会になったかもしれない。
そんな、初めての合同説明会だった。
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