みんなでバーベキュー!
今日で合宿も終わりだ。
7日間って長いなって、始まる前は思っていたけれど、今日で最後だと思うとあっという間だった気がする。
まあ、初日の合宿費紛失事件や、早乙女監督乱入事件、海に投げ込まれ事件に、サプライズで腰抜かし事件……ねえ、振り返ったら、事件しか起きてないんだけど。
うらめしい目でえいしろーと平古場を見つめれば、早く片付けれーって怒られた。なんでよ。
練習を早々にきりあげたみんなと、しぶしぶ片づけや掃除をしていると、どこかに行っていたらしいゆうじろうと慧くんが大きなビニール袋をぶら下げて帰ってきた。
「ああ、二人とも帰ってきましたか」
『え、何かするの?』
「それはー……なあ?慧くん」
「みんなでバーベキューするやっし!」
ここに来てから一番の笑顔を見せた慧くんは、手に持ったトングをカチカチと嬉しそうに鳴らした。
網の上にはお肉や野菜、早乙女監督が釣ってきたらしい魚が、おいしそうな匂いをさせながらのっていて、今か今かと箸を伸ばすみんなの皿に、どこで調理していたのか、えいしろーが作ったゴーヤーチャンプルーがのせられ、青ざめている。その様子がおもしろくて笑っていると、隣にいた不知火くんが、そういえば、と思い出したように口を開いた。
「まさか、くぬ合宿2回もやらされるとは思わなかったやしが、なあ、ガッキー」
「やさやさ!急に木手先輩が言い出してでーじびっくりしました」
『え、2回目……?』
「あー、上代さんは知らないかもだけど、これ毎年5月にやってるやっし」
「やさ、今年も5月にしたわけよ」
『そうなの!?』
「そうそう……って、ひぃ!知念!?」
「不知火……黙れー」
「ぬーで!?俺別に悪いこと言ってねーらん!?」
「言っていいことと悪いことがあるさあ」
「えええ!」
『ねえ、えいしろー、不知火くんと新垣くんが言ってること本当なの!?』
「ああ、」
ばれてしまいましたか、と、いたずらっこのような笑みを浮かべて振り返ったえいしろーに、でも楽しかったでしょう、と言われれば、ぐうの音も出ない。
確かに、大変だったけど、本当に楽しかった。事件しかなかったけど、でもきっとこんなこと、比嘉中に来なきゃ、してない。
「思い出にでもなれば、と密かに計画しましたが、まさか監督がここまで乗り込んでくるとは、想定外でした」
「わんは悪くねえ」
「でも乗り込んできた時しんけん怖かったさ」
「くぬひゃー!あれはやったーが、変な書き置き残して練習さぼるからじゃあ」
『変な書き置き?』
「ああ、7日間ほど探さないでください、って書いていましたかね」
『それは怒るよ……』
「そういえば初日の合宿費探してる時もびっくりしたやっし。知念先輩、確かー犬苦手でしたよね?」
「あ!新垣黙れー!」
「じゅんに!」
『え、知念くんそうだったの!?ごめん、犬怖かったよね……』
「べ、別に、大丈夫やしが、」
『怖いのに、本当にありがとう』
「……ぐぶりーさびたん」
「知念照れてる」
「知念照れてるさあ」
「平古場!裕次郎!しにうるさい!」
「怒った!」
「逃げろやっし!」
『ちょっと!私を盾にしないでよ!』
「あなたたち、さっきからうるさいですよ。その口にゴーヤーをつめてあげましょうね」
「うわ!ゴーヤーだけは勘弁!」
「上代も逃げろー!」
楽しくも大変だった思い出話をしながらお肉をたくさん頬張って、賑やかな笑い声が絶えないまま、こうして、地獄の七日間は幕を閉じたのだった。