どこまでも遠い
「まだゴーヤーの味が口に残ってるさあ……」
「ゴーヤーしか用意してないなんて思わなかったやし……」
『だからごめんってば!』
昨晩のご飯を、未だにぶうぶうと文句を言い続ける二人に、私はうんざりとしていた。
昨日は結局買い出しに行く暇も無く、用意してあったゴーヤーをふんだんに使った料理を出したところ、一部からブーイングの嵐。
流石にイライラ……じゃない、参ったえいしろーにより、午前中の買い出しを言い渡された。
それはいいんだけど、荷物持ちをお願いした知念くんはともかく、なんで平古場までついてくんの。
「凛も心配やったあんに」
「はぁ?ゴーヤー買わねーよーに見張りばぁよ」
『あっそ』
「今日はソーキソバな」
『はいはい、カレーね』
ニンジンにじゃがいも、玉ねぎ。お肉はどのお肉がいいのだろう。
カレールーは甘口?それとも辛口の方がいいのかな。
買うものを指折り数えながら、ふと、部員たちの姿を想像した。
喜んでもらえたらいいなぁ。
見上げた真っ青の空が海とつながって、どこまでもどこまでも遠い。
今日もきっと快晴だろうなぁ。
「……なぁ、上代も全国大会行かんばぁ?」
知念くんが、ふとぽつりと呟く。
「わん、上代に応援してもらいたいし」
『また知念くんはそういうことを』
「……まぁ、向こう案内してくれるんだったら連れってってやってもいいけどよ」
『……平古場はなんでそんな偉そうなの』
全国大会、かあ。
『ごめん、私やっぱりいけないや』
「なんでよ。みんな喜ぶやっし」
『うーん……そうだったら嬉しいんだけど』
「じゃあなんでよ」
『なんていうか、向こうに帰ってしまったら、私が今ここにいる意味がなくなりそうじゃない?』
「どういう意味?」
『んー……そうだよね、分かんないよね……私も何て言ったらいいのかわかんない』
「……」
『でも、ありがとうね、知念くん。あと平古場も』
「平古場も、は余計やし」
『誘ってくれてありがとう。いない間寂しくなっちゃうね』
「勝ってすぐに帰ってくるやしが」
『すごい自信だね』
「当たり前さぁ」
知念くんも平古場も、自信満々に笑ってみせるので、私もきっと勝てるよ、と海に向かって言う。
海からやってくるカミサマへのお願い。届いているといいなぁ。