うちなーたいむ

『あいっつら!』


もう何度目だろう。
今日は8時に近所のファミレスに集合だって言ったのに、誰も来てない。
平古場は絶対遅れてくるの分かってたけど。ゆうじろうも放浪癖あるから遅れるって分かってたけど。
知念くんや夕食時の慧くんはまだしも、あのえいしろーまで来てないっていうのはどういうことなのよ。
もうすぐ合宿だから日程云々を考えろって言ったのはどこのどいつでしたっけ!
電話をかけてもいっさいでないし……。
何度耳にあてたかもわからない携帯を、ポケットにしまいこんで、空を見上げた。
あーあ、こんなに素敵な星空なのに、気分はたいそうブルーだ。
さっさと話し終えて、連ドラ見たかったのにこれじゃ間に合わないし。
項垂れて、諦めの境地に立った時、ふいに視界がほんのり暗くなった。
ファミレスの光りのかげに気付いて、見上げれば、そこに知念くんがいた。


『あ』

「上代待ったかや?」

『知念くん……』

「遅れてごめんさぁ」

『あ、えっと、いや、だいじょぶ』

「他のみんなは?」

『まだ来てないの』

「ぬーしとぅるかや、あぬひゃー」


申し訳なさそうに、知念くんは額を押さえる。
知念くんは謝らなくていいのに、優しいなぁ。


「多分もうすぐ来るはずよ」

『うん、そうだね』

「合宿の日程かや?」

『そ。えいしろーに押し付けられたんだ』

「マネージャーでもねーらん上代がやってるってことは合宿にも連れて行くつもりなのか永四郎は」

「そうですよ」

『うわっ!えいしろー!』

「うわっとはなんですか。全員連れてきましたよ」


突然現れたえいしろーの後ろにはげんなりとした平古場、ゆうじろう、慧くんがいた。
多分ゴーヤでも使われて、無理やり連れてこられたのだろう。
平古場と目があったので、おそい、と口パクすると、舌を出された。ふざけんなよ。


『みんなに集まってもらったのは他でもないんだけど』

「わん、ポテト食べたい」

「ミミガーねーらん?お!に!く!お!に!く!」

「あ、しりしりある」

「佐世保バーガーおいてねーらん?」

「ばっか、裕次郎!佐世保バーガーは佐世保にあるから佐世保バーガーやし!」

「げえ!ゴーヤーあるばあよ!」

「ゴーヤーだけは勘弁!永四郎に食わせとけー」

「あ、ねーねー注文とってー」


こいつらまじで。


『ねぇ、えいしろー』

「そうですね、上代さん」

「え、永四郎、上代待っ……」


知念くんを目だけでおさえて、私とえいしろーは立ち上がった。
ふつふつとこみ上げる怒りに、私は口角があがったのだけれど、どうやらえいしろーも同じだったようだ。


「地獄の七日間ゴーヤづくしスペシャルバージョン」

『ご期待に添えるべく、食堂で修行して参ります』


先ほどまで騒がしかった三つの青ざめた顔と、知念くんのがっくりと項垂れた顔と、えいしろーの楽しそうな顔が、ファミレスの光りに照らされていた。
ゴーヤづくしの地獄の七日間、ついに始まります。
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