わんと私の夏休み
いいえ、まだ来ていません。今日は終業式ですよ。
と言ったのはどこのゴーヤーだったか。
そうです、夏休みが来たのです。私たちの、夏休みがやって来たのです。
暑くてゾンビになっていたクラスメイト達が、今日はきらきらと眩しいのも、夏休みだからなのです。
ああ、嬉しいなぁ。夏休み。
夏休みにやりたいこといっぱいある。
夏祭りだとか、花火だとか、キャンプだとか、天体観測もしたい。
食べたいものだっていっぱいある。
スイカも食べたいし、かき氷も食べたいし、ラムネも飲みたい。
流しそうめんにバーベキューに……。
『夏休みだー!』
「上代うるちゃい」
「喜ぶことでもねーらん」
『ねぇ……前々から思ってたけどなんで君たちそんな後ろ向きなの』
二人で顔を見合わせて、だって、なぁ?なんて言い合っている。
夏休みになんてこれっぽっちも期待していません、みたいな顔をしてるし。
まぁ確かに夏休みの宿題やら宿題やら宿題やらあるでしょうけど、そんなのさっさと済ませばいいだけで、長い長いお休みで楽しいことの方がいっぱいなのに。
「宿題はいつものことやし別にいいんやしが、なぁ?凛」
「宿題は別にどうでもいーらん、なぁ?裕次郎」
「やさやさ!」
『いやどうでもよくはないよ』
「そんなことより、わんらには地獄の七日間が待ってるばぁよ」
『そういえばこの前えいしろーも言ってたけど、地獄の七日間って何なの』
「地獄の七日間は、わったーテニス部の伝統行事」
「合宿のことだばぁよ」
『合宿……?』
「そう合宿」
「やさやさ!」
『え、ちょっと待って、私もしかして合宿で雑用させられるの?一週間も?』
「あー……そうかぁ……今回は上代も来るんだったな……」
「ご愁傷様」
『え、ちょっと、平古場!ゆうじろう!』
「終業式始まるばぁよ」
「上代なんておいてけー」
『ちょっと!』
地獄の七日間とはいったい。
不穏な夏休みが始まりました。