地獄への誘い

「さぁ、部活の時間ですよ。平古場くんに甲斐くん」

「わーってるやっし!」

「少し待ってよ」

「待ちません」

「永四郎のケチー」

「永四郎のゴーヤーマンー」

「ほう、そんなにゴーヤーが好きですか、それならば……」

「わーわー!冗談やっし!何本気にしてるばぁよ!」


みなさんこんにちは、上代なちです。
今日はわたくし、みなさんにお伝えしたいことがございましてやってまいりました。
それは何か?
そうですね、早速お答えいたしましょう。


『ねぇ、私君らがテニスしてるとこ一度も見たことないんだけど』


それまで騒ぎ合っていた3人の動きがぴたりと止まる。そしてそのまま、私に視線を向けた。
こいつ何言ってるの、的な顔×3。


「っはあ!?何言ってるやっし!いっつも部活しとるばぁよ!」

『平古場うるさい、そんなの知ってる』

「じゃあ、何よ」

『テニス部ってことも知ってるし、部活をちゃんとしてるのも知ってるんだけどさ』

「だけど?」

『私がいつも見るのって海岸荒行なんだよね』

「……そうかやぁ?」

「あー……」

「……確かにそうかもしれませんね」


私からテニス部の練習を見に行くってこともないし、練習を見たとしても、たまたま海を通りかかった時に荒行やってるくらいだし。
ボールを打ち合ってる姿なんて一度も見たことが無いわ。


「見に来ればいいさぁ」

『暑いしなぁ』

「暑さに負けるわんらの勇姿」


呆れ顔で平古場とゆうじろうに見つめられ、私はふんと鼻で笑った。
当たり前だ。暑い方が重要だろ。


「上代さん」


暫く顎に手をあてて思案気にしていたえいしろーが口を開いた。


「見に来ますか?」

『いやだから、暑いからいいって言ったじゃん』

「いえ、今ではなく」

『?』

「もうすぐ夏休みですね」

『はい……そうですね?』

「夏休み暇ですか?」

『暇っちゃ、暇だけど……』

「あっ、永四郎もしかして!」

「そうですか、それはいい」

『何、どういうこと』


不敵に笑ったえいしろー、まじかよと言いたげな平古場、なんにも理解してなさそうなゆうじろうと左に同じくな私。
少しの沈黙の後、えいしろーが放った一言で、私の平凡な夏休みは開ける間もなく幕が閉じてしまったのであった。


「上代なち、地獄の七日間へご招待しましょう」
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