ところでクールビズですか?
環境省が提唱する、夏のビジネス用軽装の愛称。
ネクタイなし上着なしのスタイルなど。
〔ビズはビジネス(business)の略。
クールに「格好良い」と「涼しい」の意味をもたせている〕
大辞林 第三版より
図書室の一角で、開いていた辞書を閉じると、目の前で本を読んでいるえいしろーをじっと見つめた。
セットされていた髪の毛が少しだけ崩れて、さらりと落ちるのをえいしろーは慣れた手つきで整えている。
『えいしろー』
「……何ですか」
『ずっと気になってたんだけど』
「……」
『いや何去ろうとしてんの』
「この場所だと集中できませんからね」
『そんなことないでしょ、この場所めっちゃいい場所だもん』
「……何ですか」
『しれっと舌うちすんな』
今いいところなのに。じゃまーすな。とでも言いたげな視線を受け止めつつ、私は本題を持ちかける。
『比嘉中のユニフォームってさぁー』
「……ユニフォームですか」
『あれってさぁー……クールビズなの?』
「…………」
『鍛えられた筋肉を見せつけるためのぴっちり感に、高貴な紫色に染まったノースリーブ、涼しくてかっこよくて俺ら最高にCOOL!これぞまさしくCOOL!ビズってやつなの?』
「帰ります」
『何でよ!』
本当に帰りそうになったえいしろーのシャツを掴んで、平古場の口真似をしながら引き留めると、それはそれは大きなため息をはかれた。
似ていませんね、とため息をはかれたままの口元からつぶやかれた一言に、むすっとしていれば、でこぴんをくらった。痛すぎ。
「元からこういうデザインだったので俺は知りませんよ」
『なんだそっかー』
「まぁ、俺はこっちの方が動きやすくていいと思っていますけどね」
『私も着てる選手が着心地がいいってんならいいと思うけどねー』
「で、何が言いたいんです」
『……』
「言いなさい」
『いやぁー脇つるっつるだなーって』
無言でチョップを食らわしたえいしろーはすんごいオーラを繰り出しながら図書室を去って行った。
頭割れるかと思ったわ。