われわれはうちゅうじんだ

『慧くん、慧くん』


あの大きな巨体にそろそろと近づき、彼の横腹のお肉をつつくと、慧くんは私に気付いて振り返ってくれた。


「上代、何よ」

『なーんでしょ!』


手に持っていたものを後ろ手に隠して、ふふーんと顎を背ける。
慧くんは少し思案気な顔をした後、思いついたように目を輝かせた。


「お菓子か!?」


慧くんならそう言うと思った。
期待を裏切らない慧くんににやにやとしつつ、私はじゃじゃーんと効果音付きで手の中の物を見せた。


『小型式扇風機〜』


だみ声で告げて見せれば、沈黙の後の、ため息。あれれ。


「ぬーがや、食いもんじゃないさー」

『そんながっかりしなくても……』

「するし!」


食べ物じゃないとわかった途端のこの態度……慧くん本当に食べることが好きなんだなぁ。
私は会話に付き合ってもらうための賄賂(ちんすこう)をポーチから取り出して慧くんに渡した。
これ賢いでしょ。比嘉中での生活の知恵だから。


「で?それがどうしたんかやぁ」

『これね、こっちに来るときに友人がくれたんだ』

「ふうん」

『こっち暑いからさ、今が使い時かと思って!持ってきちゃった!』

「ちんすこう」

『ああ、はいはい。それでね、少しでもその涼しさをわけてあげようと思ってさ!慧くんに!』

「しむん」

『いやいやーそんなこと言わずにね!ほら!結構涼しいでしょ!』

「う、うーん」


慧くんに向かって扇風機を向け、そして目配せをする。
扇風機って言えばあれでしょ。あれ。


「わーれーわーれーはーうーちゅーじーんーだー」

『扇風機と言えばこれだよね!』

「でも微妙やしが」

『そんなこといわなーい!気分だけでもね!わーれーわーれーはー』


って慧くんと二人で延々とやっていたら、いつの間にか宇宙人コンビというあだ名をつけられていました。
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