扇合戦
『みてみて!私も持ってる!』
「ぬーでやーも持ってるあんに」
『女子!私女子だから!とぼけ顔すんな!』
水色の見た目さわやかな扇子を鞄から取り出して、ドヤ顔で見せびらかす。
平古場はじゅるると紙パックジュースを飲んで、私の扇子をおもむろに取り上げた。
え、なんで。
まじまじと眺めたあと、紙パックを机の端に寄せて扇子の拡げたまま手に持った。
まさかお前……!
私が扇子を取り上げようと身を乗り出したと同時に、平古場の手から放たれた扇子は、そのまま一直線に紙パックへ飛んで行った。
「っしゃあ!」
『あああああ私の扇子ううううう!』
見事に命中した扇子は紙パックと一緒におちていく。
地面すんでのところで扇子を拾い上げ、そのまま片膝立ちの姿勢で、紙パックを拾い、平古場の頭にすこーんとあてた。その俊敏なる動きといったら……。
「あがっ!何するやっし!でも今のちょっとかっこよかった!」
『嬉しくもねえわ!』
私の大事な扇子に何してくれやがる。
平古場ウイルスをぬぐいとって、鞄の中に大事にしまいこんだ。
これから大事なもの平古場の前に出さないようにしよう。そうしよう。