ねっちゅうしょー

「先ほどの体育で保健室に運ばれたんですってね」

『げ、えいしろー何で知ってんの』

「げ、とは失礼ですね」


何でここにいるの、と聞けば、どうやらゆうじろうに用があったみたいで、そのついでらしい。
えいしろーにとって私はついで程度の存在なのか。


「熱中症には気をつけなさいよ?」

『え?ちゅうしよう?』

「熱中症です!」

『なんだびっくりした。えいしろーにいきなり迫られたかと思った』

「何故俺があなたなんかに迫らなければならないのか」

『私なんかとは!』


相変わらずひどいやつだ!
そっぽを向いて、私は次の授業の準備を始める。
それでも尚視線を感じるので、えいしろーを見上げると、口をぱくぱくっと動かした。
首を傾げると、えいしろーは眼鏡をずり上げる。


「まぁ、でも、本当に熱中症には気をつけなさいよ。あなたは本土の人間なんですから、暑さに耐えられないのも仕方がないことです」

『えいしろー……』

「もっと自分を大事にして、周りに頼りなさい」

『心配してくれてありがとう』

「いえ、別に俺は」

『次からは遠慮しないよ』


えいしろーは恥ずかしそうに顔を歪めながら、でも、笑ってくれた。
ただ、ゴーヤーだけは遠慮するね、と言うと、舌打ちされた。やっぱりね。
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