制汗剤は媚薬

夏の体育は本当に女子の敵でしかない。
どんなにかわいい女子でも汗ぐらいはかく。そんなの普通だ。
むわっとむせかえるような更衣室に充満する制汗剤の匂いは、最早もともとの匂いがなんなのかわからなくなっていた。

……はっきり言っていい?
くっさい!むせる!くっさい!

これが本音です。
そして、これが女の子なんですよ。ふはははは。
ゆうじろうと平古場が時々女の子はいい香りがするだなんて言ってましたけど、夢見すぎなんじゃなかろうか。
と考えながら、私はスプレーではなく、シートを取り出した。
私は、スプレーよりシートの方が好き。
なんか汗ぬぐってくれてる感じあるし、さらさらするし。
スプレーも使う時は使うけど、夏場は専らシートだなぁ。
シートをゴミ箱に捨て、友人と更衣室を出たら、私の目の前ギリギリを誰かが通り過ぎた。
ぎょっとして見上げたら、まさかの知念くん。


『びっくりしたぁ!』

「あい?上代いたの?」

『い、いたっていうか、出て来たっていうか』


更衣室の文字を指差せば、ああ、と知念くんも納得がいったようで。
友人は気を使ったのかなんなのか、先に行くねーなんていってしまわれた。
わ、わあ。突然の二人っきり。


「上代」


ふいに名前を呼ばれて、気づけば、首元に知念くんの顔があった。
すん、と息を鼻で吸い込むような音が聞こえて、どぎまぎしていると、知念くんは元の体制に戻って、首を傾げた。
いや、傾げたいのは私なんだけれど。


「なんかいい匂いするさぁ」

『えっ』

「シャンプーあんに?」

『えっ、あっ、制汗剤……』

「あー」


納得したといわんばかりに頷いて、知念くんは、その匂いでーじ好き、と言って笑った。
そして、ぶわっと熱くなって何も考えられなくなった私をそのままに、何事もなかったように知念くんは去ってしまった。
あ、だめだこれ、制汗剤は私にとって媚薬になるわこれ。
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