入道雲を飲み込む
『雲』
「そうですか。それはいいですが、何故俺の席で見てるんでしょうね」
『えいしろーの席が窓側だったから』
「いい加減どかないとゴーヤーチャンプルー食わすよ」
『あ、一応調理はしてくれるんだね。でも結構ですー』
少し残念といった表情のえいしろーに急かされ、私は椅子から立ち上がった。
そしてそのまま窓から身を乗り出すようにして空を見つめた。
もくもくと空を覆う入道雲にごくりと唾を飲むと、えいしろーは危ないですよ、と言いながら私の制服をつかんだ。
落ちないように心配してくれたのかな。優しいね。
落ちるのは勝手ですが、死ぬなら私のいない場所で寂しく死んでくださいと言われた。
ひどい。
「今日は夕立でも降るんでしょうかね」
『あ、あの雲コロネっぽい』
同時に呟いて、私たちはお互いに顔を見合わせる。
私の笑顔に対し、えいしろーは眉根を寄せていた。え、そこまで不快なの?
「あなたはそういう人でしたね」
諦め顔でため息まで吐かれる私とは一体……。