さかさまてるてるぼうず


それからというもののジローくんは今まで以上に教室に来ることが少なくなった。
前は何時間か授業を受けたりもしていたけど、今は晴れている日ですらまったく姿も現さないことも多い。ぽっかりとあいた隣の席は、もう見慣れてしまったけどやっぱりさみしい。
この間までの大雨がうそのように晴れていて、あの時ジローくんと一緒に帰ったのは夢だったんじゃないかとさえ思えてくる。
あの時私が思わず聞いてしまったたこと、彼はまだ気にしているのだろうか。
そんなことを考えると胸がチクチクと痛くて、眠れない夜もある。
ジローくんに会いたい。
雨の日なら。
雨の日の放課後ならもう一度彼に会えるのかもしれない。


「今日も来なかったね」
『うん』
「また作ってんの?」
『うん』
「しかも逆てるてるぼうずなんて」
『雨降らないかなって』
「雨嫌いって言ってたじゃん」
『そうだけど、でもなんか好きになった』
「何それ」


友人は呆れた顔をして私が作った逆てるてるぼうずをつついた。
バカみたいって思ってるんだろうな。私だって思ってる。ばっかみたい。こんなことして本当に雨なんか降るわけないって分かってるけど、何故だか縋ってしまう自分がいる。少しの可能性でも期待してしまう。
でも、その日も結局ジローくんは教室に来ることはなかった。


帰り道、あの時のことを思い出しながら歩く。
見慣れた景色も、ジローくんと一緒だったからなんだか新鮮に見えた気がした。でもやっぱりこうやって一人で帰っていれば、つまらないいつもの風景。
また一緒に帰りたいな、なんて。
そんなの無理だし、きっとジローくんの特別になんてなれない。
こんな風に逆てるてるぼうず作る行為でさえおこがましいんだろうなぁ。


『でもね、期待しちゃうんだ』


ぽつんと呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく人気の無い道に消えていった。
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