やくそく

はじめまして。
まさかこうやって、あなたと会えるなんて思ってもなかったから、とても緊張しています。
ジローくんが、あなたに私を紹介したいって言ってくれたんだ。
少しだけ戸惑ったけれど、でも、あなたと話したいことがあったから。


ああ、そうだ。
あれからさ、ジローくんちゃんと教室に来て、授業受けるようになって、この春無事卒業したんだよ。
もう、なんでここにいるんだろうだとか、ここにいる意味ないだとか、そんなこと口に出すこともなくなったよ。だから心配しないで。ジローくんも、また進み始めたから。


最初は、ジローくんは私をあなたの代わりにしていた。
でも、それでもやっぱり、あなたとは全然違うって、泣いて、後悔して。ジローくんは、私とあなたと重ねるたびに、息もできないくらい苦しんで、傷ついて。それなのに、彼は私の隣にいたいと言ってくれた。


あいつのことを忘れるなんてできない。


そう言ってジローくんは謝るけれど、謝る必要なんてないのにね。
いっぱいいっぱい利用して、傷つけたのは私。あなたのことも、ジローくんのことも。
いつもね、ジローくんあなたのことを話してくれるの。
あなたと一緒に行ったところだとか、一緒に食べたものだとか、小さいときの思い出だとか。
少し妬いちゃうなぁ。
だって、その話をする時のジローくん、とてもとても幸せそうだから。
ありがとう。ジローくんを幸せにしてくれて。
ジローくんのことを大切に大切に思ってくれて。
彼が今幸せに笑えるのは、あなたがジローくんを大切にしてくれたおかげだから。
きっと、あなたも、ジローくんの幸せそうな笑顔が好きだったんだろうなぁ。
だから、最後まで笑っててほしくて、言わなかったんでしょう?


……ねぇ、約束するよ。
私、絶対ジローくんのこと幸せにする。
あなたの分まで、あなたと一緒に。


「そろそろ行こうか、にこ」


振り返ると、ジローくんが笑顔で待っていた。
手に持った花を飾ると満足げに頷く。
鮮やかな花々は、まるで、ブーケのようで、私は目を細めた。


「あいつと何話してたの?」
『内緒』
「A〜?」
『女の約束だから、ね!』
「混ぜろC!」
「ジローくん男じゃんか!」


顔を見合わせて笑う。
ああ、この幸せな日々が続きますように。どうか、いつまでも、ずっと。
私たちを迎える真っ青な空は、まだ雨を知らない。
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