あざやかなあお


雨は、もしかしたら彼の涙だったのかもしれなかった。
大切な人を思い出しながら歩くのはとても辛くて彼の心は涙であふれるけれど、それでも優しくせずにはいられなかったのだと思う。
それは私が彼の大切な人にうり二つだったから。
あふれて、傷ついて、大雨になって零れ落ちる。そのたびに、ジローくんはあの大きな青い傘で受け止めていて。何度も何度もそれを繰り返して、受け止めきれなくなった雨は、あの日私たち二人に直接降ってきた。


じゃあ、今は?
この雲一つない空のように、彼の心も晴れ渡っているのだろうか。


私は、彼のことを、忘れることができるのだろうか。


冷房がきいた教室の窓を開け放つと、むっとむせ返るような生ぬるい風が頬を撫ぜた。
暑いと言いたげなクラスメイトの目を避けるべく、白いカーテンの中にもぐりこんで、空を見上げる。
ジローくんとの日々をおしまいにしてからだいぶたって、今日はもう終業式だ。
なんだか、とても長い長い日々だったなぁ。
ジローくんと初めて話をした時が昔々の出来事のように思えてくる。
……またこうやって、ジローくんはいないのに、ジローくんの事ばかり考えている自分が嫌になってくる。未練たらったら。ホントにバカみたい。バカみたいにジローくんのことが好きだった。いいや、今でも。
今でもジローくんのことが好きだ。
昼休みの終わりを告げるチャイムがなった。
真っ青な空の向こうに、真っ黒な雲がこちらに近づいてきていた。
雨が降る。そう確信したと共に、私は窓をしめた。


雨が降り出したのはいつからだったのだろう。
いつの間にか降っていた雨は、最近は見ないほどの大雨だった。すでに深い水たまりがあちこちにできていて、落ちてくる大粒の雨に打たれてははねていた。
折り畳み傘じゃ、この雨はしのげないなぁ。
放課後の昇降口は相変わらず人気がなく、頼れる友達もすでに帰ってしまったあとだった。
また、この場所で、私は雨がやむのを待つのか。
見上げた空は真っ黒で、小ぶりになるのかすらもわからない。
早く、早く、帰りたい。
じゃないとジローくんをまた思い出してしまう。早く、早く、帰らなきゃ。


目の前で開かれた鮮やかな青に、私は涙が出そうになった。


ジローくんだ。
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