早起きは三文の得


私には、幼馴染がいる。

そいつは、ミントンが好きなくせに何故か剣道部に入っていて、さらに、風紀委員会にも所属している。だが、時々、こっそりミントンの素振りをして、サボっているのが見つかってしまい、その度に、副委員長の土方さんに追い回される始末。
これも、もう、10年以上の付き合いで慣れた。
家が隣同士だったため、親同士も仲がよく、毎日と言って良いほどにお互いの家に出入りしていた。学校に行く時や帰る時はいつも一緒。どっちが早くつくか競争しながら帰ったのを覚えている。
そんな私たちには共通点があって、それが、寝起きが悪い、ということだった。
だから、お互いに起こしに行ったり、起こされたり、ということをしていたのだが。
まさかこの歳になってまで続けるとは思わなかった。
それが小中学校の時の思い出だと言いたいところだが、現在進行形なのだ。
高校3年生となった今、幼馴染の部屋だと言っても、男の人の部屋だ。
なかなかに恥ずかしいものがある。


『さがるー?起きてー?』


先程からずっと声をかけているのだが、返答なし。


『さーがーるー!さがるくーん!』


少し寝返りをうっただけで全く起きる気配もない。
私は、退の枕元に正座して、顔を覗き込むが、気持ち良さそうに寝ているだけである。


『はぁー……』


ったく、年頃だというのに退ママは何で未だに私を部屋に通してくれんだろ。
まぁ、退は、健全な男子だし……って、それはそれでダメじゃん。


『さがるくーん?いい加減に起きてくれないかなー?……ラケット壊すぞ、コラ』


……何故だ。何故起きない。
大事なラケット壊しちゃうぞ発言をしたというのに……!
何だ、何だこれ。
嫌な予感してきちゃったんですけど。


『こ、これ、揺さぶって起こさなきゃ、なのかな?』


手を伸ばすが、この先嫌な予感しかしない。
何か、危ない気がする。
ど、どうしようかな、これ、学校、もう行っちゃおうかな。
でも、退、遅刻しちゃうし、どうしよう。
ほら、今だって手首掴まれて……って、え?
と、思ったのもつかの間、ぐい、とそのまま引っ張られ、何か温かいものにつつまれてしまった。


「おはよう、渉亜ちゃん。朝から俺の寝込み襲うなんて大胆だね」
『さ、退……?』


薄暗い布団の中、退から声をかけられて見上げると、やけに、にこやかな退がいました……。


『えーっと……退、遅刻しちゃうよ?』
「ま、それもたまにはいいんじゃない?」
『いやいやいや、学生たるもの日々勉学に勤しむべきだと思うんですが……』
「昨日、渉亜、小テストで0点とってなかったっけ?」
『ななななな何故それを!?』
「幼馴染だから」
『理由になってない!』
「まぁ、気にしない、気にしない」
『気になるってば!ってか、本当に遅刻するよ!?』
「んー……」
『ちょ、離せ!バカ、退!こ、腰に手をまわすな!』
「あー、もう俺、渉亜を手放す気なんてさらさらないから」
『はぁ?』
「まぁ、男の性だよ」
『ちょ、待て!私と退は幼馴染でしょうが!』
「違うよ」
『え……?』
「俺は昔っから、お前のことを幼馴染だなんて思ったことなんて一度もない」
『それって、どういう……、』
「俺は渉亜のことが好きだって言ってんの」
『なっ!!』


退のくせに……。
退のくせに、退のくせに……!
何が好きだ、だよ。あーもう……!
……もう一度聞きたいと思った私もそうとうやられてる。
退が、ふと、笑った気がした。


「返事は?」
『……は、い。』






早起きは三文の得






「はぁ、4時に起きたかいがあった」
『は!?何これ計画的犯行?』
「……このまま、できちゃった結婚なんてどうかな?」
『え、ちょ、退?退!?ま、まって、って、ぎゃぁぁあああ―――!』



(ブラックスマイルにしてやられた)


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