スピンオフ



「なぁ、俺がいなくなったらお前どうする?」


ソファにぐでんと座った銀さんは私が部屋に上がる音に気付いて、そのままの状態で顔だけ後ろに向けた。その鼻ほじりながらしゃべるくせどうにかならないのかな。


『何それ、銀さんが死ぬってこと?』


真っ直ぐに冷蔵庫に向かって行って、頼まれたものを直し込む。やっぱりいちご牛乳ばっかり。納豆もこれいつ切れだよって感じだし。ついでに自分の畑でとれた野菜も放り込んでおいた。


「おいおい、何勝手に殺しちゃってんの?銀さんを殺さないでくれる?」
『だっていなくなるって言うから』
「極論すぎだろーがよ」


少しいらだったような顔をして、銀さんは頭をかいた。はいはい、ごめんなさいね、まじめに答えてあげればいいんでしょう?


『で、何?銀さんがいなくなったらどうするかって?』
「お、おう」
『んー……別に何もしないかな』
「えっ」
『今までどーりふつうに生活するよ』
「何この子薄情すぎない!?ねぇ、薄情すぎるよね!?ねぇ!?少しは悲しんでもいいんじゃない!?」
『銀さんいてもいなくてもあんま変わんないし』
「えええええ!ひどい!銀さんは渉亜をこんな子に育てた覚えはありません!」
『こんな人に育てられた覚えもないですけどね』
「冷たい……」


がっくりと項垂れた銀さんの横に座る。
銀さんがいなくなる、ね。
銀さんが黙って私の前からいなくなるのなんて、いつもの話だし、危険なこともいっぱいしてることも知ってる。どうせまた無茶でもするんでしょう。銀さんのことだから。でも、それでも銀さんがこうやって私の元に戻って来てくれているのも事実だ。信じてはいるけれど、それでも、万が一の可能性も否定できない。だから帰って来いなんて言わない。銀さんの決めた道なんだもの。私がとやかく言えるわけでもない。


『……まぁ、でも』
「……」
『毎日お墓まで会いにいったげるから安心しなよ』


毎日お花も変えるし、水も変えてあげる。時々お団子とかお酒も持っていってあげるよ。銀さんの友達も連れてきてあげるし。だから、銀さんは寂しくないよ。


「……だから、勝手に殺すなって」


そう言った銀さんは嬉しそうに笑っていて、でも、とてもとても寂しそうだった。


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