安眠妨害
既にベッドに入って、寝息をたてているジロくんに、聞こえてないだろうけど、一応声をかけた。
当然返事はないし、別に返事を期待していたわけでもない。
毎日の習慣みたいなもの。
電気を消して、そのまま私はジロくんの横に入ろうと、そっと布団をめくった。
『わ!』
ベッドについていた右手を思いっきり引っ張られ、私は不格好に枕につっぷした。
あいたた。なんだなんだ?
そう思って顔をあげれば、そこにはぱっちりと目があいたジロくん。
え、起きてたの。
なんて間抜けな声も出せずに、ジロくんは私の唇を奪った。
待って待って。
私の頬に添えられたジロくんの手をぺしぺしと叩いてみるけれど、それでも何度も角度を変えて、息もできないくらいなのに、あまりにもジロくんが真面目な顔をしているものだから、その目から目を逸らすこともできない。
いつの間にか唇を離していたことにも気づかない程にぼうっとした頭で、なんでこんなことをしたのか、なんてことを考えてみるけれど、全然分からない。
「てん」
ふいにジロくんが、私のおでこに唇を落とす。
「ずっと隣にいるから安心しろC」
聞いたことのない真剣な声で、ジロくんはそう呟く。
一体急になんのことだろう、と思っていると、再び聞こえる安らかな寝息。
え?待って、寝てるの?ちょっとこれ寝ぼけてただけ?
ええええ、なんという安眠妨害。
今夜は眠れないよ、ジロくん……。