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重たい足を引きずって、帰り道にある公園に立ち寄ると、草臥れたベンチに座った。
夕暮れの日差しがまぶしくて、目に染みる。

今日はなにもかもダメだった。
事前に準備を重ねたデータを一瞬でふっとばし、もう一度初めから作り直したものの、印刷機械の故障、コピー機の紙詰まりなんかが重なり、焦る気持ちで臨んだ会議も、何を言いたいかまとまらず、最悪の結果に至った。
こんなはずじゃなかったのに。
もっとうまくできたはずなのに。
涙が出てきそうになって、上を見上げると、視界に飛ぶ鳥がいた。
鳩だろうか、でもよく見るやつじゃなくて、そう、手品でよく見るような白い鳩。
なんでこんなところに。
鳩は、そのまま優雅に地面に降り立つと、今度は滑稽にぽてぽてと進んでいく。
その鳩を目で追えば、そこに一人の少年が立っていた。
赤いおかっぱの髪で、中学生だろうか、制服を着ている。
その少年の、少し日焼けした腕が大きく振られたかと思うと、ぱらぱらと白いものが舞って、完全に手品脳になっていた私は、一瞬紙吹雪かと思ったが、瞬時にたくさんの羽ばたく音で否定された。
餌だ。
白い鳩も混じって、そこは一瞬にして鳩の大群。
彼が足を踏み出すたびに、餌の後を追って、まるで行進みたいだ、なんて思う。
軽い足取りがステップを踏んでいるようで、それがとても楽しそうに見えて、目が離せない。
鳩のように少年を目で追っていると、彼の足が、ふと、強く地面を蹴った。
一斉に鳩が飛び立つ音が、耳いっぱいに満たす。
思わず空を見上げたら、鳩たちと一緒に少年はそれはそれは高く高く飛んでいた。
彼の背に、飛ぶ鳩たちが連なって、大きな羽を生やす。
天使だ。
そう思った。
彼はきっと、天使だ。
くるりと宙を舞って、降り立った彼は、また楽しそうに鳩を追い、駆けていく。
彼の後ろ姿が見えなくなるまで、ただ茫然と立ち尽くしていたが、ふと我に返ると、そこには、白い羽が1枚落ちていた。
拾い上げると、私はそれをポケットにしまう。
ポケットの上から、少しだけ触れて、いつの間にか軽くなった体で、帰路につくことにした。

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