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柳生と付き合い始めて3年、大学を卒業した私は関東を離れて九州へと来ていた。
柳生は大学院へと行き、遠距離恋愛が始まったばかりだった。

「もう彼女とは思えません」

電話口で柳生はそう言った。
理由なんてものはありふれたものだった。学業が忙しくなって私の相手をする暇がなくなった。だから暫く距離を置こう。そんなもの。
柳生の彼女が私ではなく、学業になった、それだけだった。
納得できないようなできるような、そんな気分だったのだけれど、柳生の申し出を受け入れた。
卒業してしまえばきっと、また戻ってきてくれる。そう思っていたからだ。
それなのに。
これは一体どういうことなのだろう。
出張で関東に来ていた私が目にしたのは、柳生のあふれんばかりの笑顔と、それに応えるかわいらしい女の子の笑み。ぎゅっと固く繋がれた手先は赤い。
ああ、なんだ、そういうことだったのだ。

「もう彼女と思えません」

その言葉の意味通りだった。

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