▼!薬売り
…………ど、どうしよう…
薬売りがモノノ怪に食われた…だと…?!!
「ぎゃおおおおおおおん!!!!」
『っ、るさいなァ』
目の前には薬売りを一息で飲み込んでしまった、化狐。
形、真、理は揃っていたのに。
「いやああああああっ!!!こっちこないでよおお!!」
『!』
化狐が目的の人物を食らおうと大口でゆっくり近づいてゆく。
『……』
どうすれば、いい────…。
『お、お前の相手はこっちだ化狐!!!』
薬売りの箪笥からつくり置きしてある札をわしづかみ、一枚、また一枚と化狐に投げ、注意をこっちに向ける。
「ぎゃうん!!……ぐるウウウ…」
よし、とりあえず気は反らせた。 だがしかし、これからどうヤツから逃げればいいかはわからない。 作戦としては、プランAとBの2つ。
退魔の剣を拾い上げ、一か八か、プランAを実行に移す。
『女は度胸だ!やけくそだ!!』
退魔の剣を化狐に向けて構える。
『……"真"と"理"によって。剣を、…解き放つ!』
ト キ ハ ナ ツ !
『…マジでか!うっ』
退魔の剣が声を発すると前方から強風が吹き荒れ、目が開けられない。
「………我と交われ」
『っ!!』
強風の中、背後から女性の低ボイスが聞こえ、誰かが自分と重なる感覚…それはお世辞にも心地が良いとは言えない歯痒さと気持ち悪さが……うえ。
そうこう愚痴っている間に、着ていた彼岸花が咲き誇る赤い着物が、腰丈まで短くなると同時に黒い袴が現れ、自慢だった茶色の髪が白く靡き、容姿が一変して異端になった。
「…………はァ…生身は久しいの…」
喉から出たのは自分の声色ではない。
「ふふん、このような雑魚に遅れを取るとは、薬売りも腕が落ちたものよの。…どれ」
─妾が滅してしんぜよう。
*
「ありがとうございます、ほんにありがとうございます薬売り殿」
「いえ、いえ、ご無事で何より…」
『……』
「貴女も、ありがとうございました。私なんかを助けて頂いて」
『あ、いえ。怪我がなくて良かったです』
「………では…行きますよ、名前」
『あ、はい!……お世話になりました』
見送りに来てくれた女将さんに一礼し、スタスタと既に歩きはじめてしまった薬売りの後を追いかけた。
『薬売り、今回ばかりはどうなることかと思ったよ』
「……俺も、少々焦りました。まさか名前が、剣を解き放つとは、思いませんでしたから、ね」
『うん、私もびっくりした。出来たらいいなっていう願望の元に行った行為だからね』
あの後は彼女が体の主導権を握り、化狐を軽々滅した。
滅した後は久しく運動をしてなかったから眠いとかなんとかで直ぐに彼女は引っ込んでしまったが。
「…、そういやぁ言い忘れてましたが、退魔の剣を抜くことが出来た人間は、寿命がなくなっちまう、そうで……」
『てことは…ずっと薬売りと生きていけるってこと?』
「そうなります、ね」
(マ、マジでか!//)(…これからは、夫婦で通します、か?)(是非っ///)
退魔の剣欲しい。ハイパーさんになりたい。
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