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「(ゲルテナ展か…ちょっと見ていこうかな…)」
学校帰りに通った美術館。 軽い好奇心で中に入ってしまったのが運命でした。
「ハンカチは持った?」
「うん」
受付カウンターに行けば家族連れが入館手続きをしていた。 娘さんは1人で先に行ったみたいで、少し母親さんが寂しそうだ。
「私、あの子と見て回りたかったのに…残念だわ」
「いいじゃないか、好奇心旺盛で。あ、これはすみません」
『ああ、こちらこそすみません。ありがとうございます』
カウンターから顔を上げた父親さんが私に気付いて母親さんを連れて足早に美術館の中へ進んで行った。
「こんにちわお嬢さん。ゲルテナ展へようこそ。お一人様ですか?」
『うん、1人です。ここに署名を?』
「していただけたら光栄でございます」
入館料を支払い、署名をしておく。 パンフレットを貰って、作品を順々に見ていくと、ひとつ気になる作品があった。
『絵空事の世界…』
なんだか不気味な絵だ。 深海の夜も深海魚が気味悪い大きさだけどこれもよっぽど気味が悪い。
二階もすべて見終わって、さあ一階に戻ろうと顔のない石像を通りすぎた時に、一瞬の停電。
『ん?なんだったの、今の…』
『あ、あれ?真っ暗…?』
電気は愚か、窓の外も暗い。 いつの間に閉館してしまったのだろうか? カウンターの中に入って館内の地図がないか確認をするが、懐中電灯と単3電池が6本だけあった。
「………パパ?…ママ?」
ああ、よかった。私以外にも人がいた。 カウンターから立ち上がり、声がした方を見ると、はじめに見た家族連れの娘さん。え、娘をおいて帰るってどんな両親なの?!
「…………だれ?」
『えと、私はナマエ。貴女は?』
「…イヴ」
『そう、イヴちゃんね?』
よろしくイヴちゃん ああ、イヴちゃんもだったのね?早くここから出ましょう
20120501
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