▼!1日目(2)

さっぱりしたーと、お風呂から出てヒトモシがいるであろうリビングに戻る。

まだ口にいっぱい葡萄を含んでいた。
か、かわいい…!



『ヒトモシ、ちょっと難しい話があるんだけど…良かったら葡萄を飲み込んでくれるかな?』

「 ン、モシッ! 」



ごくんと一息に飲み干したヒトモシが私の前に歩いてくる。



『まずは自己紹介。私は名前、改めてよろしくヒトモシ』

「 モシ!モーシ、モシモシっモシモー! 」

『ヒトモシには名前があるの?』

「 モーシー 」

『……そう、ないのね』



熱いのかな、と頭を撫でれば暖かい何かに包まれたような感覚。
そして、撫で乍本題に入った。



『あのねヒトモシ、気付いたかも知れないけど、この世界にはポケモンはいないの。あなた以外はね?』

「 モシッ?! 」

『本当よ?あなたがいた世界はここじゃないの。だからあなたが外を出歩けばこわーい人達に捕まるということを忘れないで』

「 ……モ、モシ 」

『それで相談なんだけど…あなたがお家に帰れる時が来るまで私と一緒に暮らしましょう?安全は保証するから』



あ、あれ…?ヒトモシがそっぽを向いてツーンと……、拒否された?



『ヒトモシ、何が嫌なの?それとも私があなたをパートナーにしてもいいのかしら?』



ため息混じりに呟けばモッシィ!と元気な返事。
え、えええー……

ヒトモシは凄く嬉しそうに、私からしたらえ、冗談だよね、な期待を抱いているらしい。



『あのね、ヒトモシ。この世界にはモンスターボールはないの。それでも私のパートナーになりたい?』

「 モーシ 」



へっへっ、甘く見るなよ姉ちゃん。とでも言いたげな顔をするヒトモシは空になっていて捨てる予定だった口紅ケースを開けて、中に入ってしまった。

いやいやいや、どうやってそんなとこ入ったのあんた。

体が紫に光っているヒトモシを見れば、エスパータイプの技でも使って小さくなったと推測する。


そんなにパートナーになりたいのか。年甲斐もなく照れるわ!←


口紅ケースを拾い上げ蓋をしめる。



『私が出ても良いって言うまでその中にいるならパートナーになってあげる』



ケースの中からモシモシッ!と嬉しそうな声が小さくこだました。

キャップを開けて下に振るとにゅるんと出てきたので思わず爆笑。



『なっ、なに今のっ…!可愛い過ぎるっっ!!あははははっ!』

「 モ、モシ?/// 」

『そ、そう?じゃないよっ…!』



久しぶりに腹筋が割れそうなくらい笑って、ヒトモシを抱き上げる。



『パートナーなら名前がいるね、ヒトモシ!』

「 ! 」

『何がいいかな?…囲炉裏、イロリってどう?』

「 モシモシモシィィイ! 」



気に入ってくれたみたいで、その証拠にぎゅうっと抱き付いてくるイロリの頭を撫でて、笑いあった。




これからよろしくね、イロリ
モーシ、モッシ!

20120419


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