青の祓魔師


「…ふふふ、買ってやったぜ」

とうとう俺は買ったのだ。
寮の部屋に戻った俺は大きい袋からそれを取り出すとニンマリ笑いながら眺める。
上下きっちりと揃った下着。今までとは違うタイプの下着。
けどいざ手にするとなんだか気恥ずかしい。

俺はさっそく下着売り場とやらにしえみたちと一緒にいった。
そこは俺が今まで見たこともないほど女の子の世界っぽくて、なんというかまあ、すごかった。
店員さんにサイズとか色々されて、それもまたすごかったけど行って良かったと思う。
なんたって、この下着!!

「………紐」

両端を紐で結ぶタイプの下着。
青を基調とした感じで可愛らしいレースもついている。

紐は志摩おススメの下着とやらだ。
店に行く前に男はどんな下着がいいか聞いたらどうやら紐がいいらしい。
こんな両端を結んであるだけの下着とか、着た時外れないか不安で仕方がねえと思うけどな。
それ以外にも店員のおススメとか色々と買っておいた。

「まあ、とりあえず…着てみるか」

志摩おススメの紐パンツだとかいうのを着てみる。もちろん上もお揃いの奴だ。
しえみ達や店員さんに教えられた通り、脇下の肉まで入れて収める。
するとなんだか前よりも胸がでかくなった気がした。気分だけだけど。

なんだか今までとは気分まで全然違う。
背筋も自然と伸びていく。
俺は感動して机の上に置いてある小さ目の長方形の鏡の前に立った。

「おお、これは!」

中々いいんじゃねえの!?
上半身しか映らないけど、俺はもう有頂天。だっちゅーのをして谷間を作ってみたり、上げてみたり寄せてみたりと一人で大盛り上がりしている。

「って、こんなことしてる場合じゃなかった」

雪男に「姉さんは色っぽい過ぎて困る」って言わせるんだった。
だけどふと思う。

見せんのか?

雪男に下着姿を?

しかもこの紐パン装着を?

俺はようやく冷静になった。
どうやら今までの俺は頭がおかしかったらしい。
一人下着姿で喜んだり、弟に何か言わそうとしたり。
ああ、だから下着買いに行ったとき、しえみや出雲は俺を可愛そうというか憐れむ的な目で見てたのか。
一緒に買い物に行けて楽しそうにもしてたけど。

確かに、異性のために下着を買うならまだ分かるけど、実の弟のために下着を買うってなんか変だよな。
あれ、けど俺たちの場合なら変じゃないのか?

俺はまたもう一度鏡に視線を向けた。
紐パン姿の女が一人ではしゃいでる。
なんというか、それは非っ常に残念というか、ぶっちゃければ魅力的な姿ではない。

「…やっぱやめとこう」

ああ、そうだ。それが正解だ。
よかったよ俺。雪男が来る前に気づけて。
弟に紐パン姿をわざわざ見せるとか、恥ずかしすぎるだろ。

いやいや、けど今回は買い物に行けてよかったと思う。
だってちゃんとした下着買えたし。中々楽しかったし。
そうだ、プラス思考だ俺。

俺は脱ぎ散らかした服を拾い、ベッドの上にノソノソと戻る。
とりあえずこの下着をどうしようかと考えた。
このまま装着か、それともタンスの奥か。
こんなヤバイ下着あいつには見せれないし、けどだからと言って捨てるのももったいない。

「ただいま」

「ふぎゃああああ!!」

俺は慌てて布団に潜りこんだ。下着姿のまま。

「…なに、どうしたの?」

俺の可笑しな悲鳴のせいか、雪男は驚いたように目をパチクリさせている。

「な、ななななんでもないっ!」

「全然何でもない感じじゃないけど」

「いいから!!俺のことは放っておけ!!」

俺が強く拒否すると、雪男は不審そうな顔をしながらも祓魔師のコートを脱いで椅子に座った。
セーフだ。ギリギリセーフ。
どうやら雪男は俺の恰好をみていないようだ。

だけどここからが問題だ。
だって俺は今現在進行形で下着姿。
下手したら変態の域に入りかねない。

いっそ堂々と着替えるか?
いやいや、それはダメだろ。
雪男に気づかれる。紐パンだっていう事に気づかれる。

それとも布団の中でモソモソ着替える?
それもなんか怪しまれそうで怖い。

「…どうしよう」

俺の心の底の言葉が思わず声に出てしまう。
本当にどうしよう。
ああ、こんなことなら俺は色気がありませんってなんでもいいから認めとけばよかった。
それなら変なテンションにならなかったし、後先考えずにこんな事にならなかった。
過去の自分がなんとも妬ましい。

「姉さん、さっきから何してるの?」

「い、いや…これはだな…」

「眠いの?布団に潜ってるけど」

「いや、眠いというか…あの、その…」

ああ、本当になんて言えばいいんだ。
いっそ当初の目的を達成するか?
さっきみたいにだっちゅーのしながら「姉ちゃん今下着姿なんだ。どうだ、色気たっぷりだろ、テヘッ☆」っていう感じで。
ダメだ、俺がそんな事するだなんて想像しただけで鳥肌もんだ。
さっきまで調子に乗ってた俺爆発しろ。

「それとも身体の調子が悪いの?」

本当に心配そうにする雪男に俺はなんだか罪悪感に似たものが湧きあがる。
ああ、弟よ。今はお前のその優しさが痛い。

「姉さんってば」

「…………あのだな、雪男。姉ちゃんは今、下着姿なんだ」

俺はもう正直に言う事にした。
もうこの際、はっきり言って部屋に出て行ってもらおう。

「なんだ…そんなことだったの?」

「悪かったな…だから部屋から出て行ってくれ」

「なんで?」

「……は?」

「いつも平気で着替えてるじゃない」

ああ、そうだった。そうだったよ。
俺ってばなぜだろう、今まで弟がいても普通に着替えてたよ。
けどそれはあいつも着替えてるからまあいっかって感じで着替えてた訳で。
あれ、それがダメだったのか?
まあ、あまりにもジロジロ見るとさすがに見んなって言って怒ったりはしたけど。
それでも俺は気にせず着替えてた気がする。

ああ、だから俺って色気がないのかも。
ガサツとか男らしすぎるとか言われても仕方がない。
俺の馬鹿と言いたくなる。

「それにどうせあの色気のない下着なんでしょ?別に見たりなんかしないよ」

反省していた筈なのに、俺の中で何かが切れる音がした。

「ンだとコラァッ!!よく見ろ!!俺だってちゃんとした下着付けてんだよ!!」

俺は布団を剥がし、雪男の前に立っていた。
そして「あっ」と思う。時既に遅し。
雪男は目を丸くして俺の身体を見ている。

「………わ、わわわわわっ!!」

大慌てで俺はまた布団の中に潜り込んだ。
穴があったら入りたい。
雪男が椅子から立ち上がって俺の方へと寄ってくるのが分かる。

「可愛い下着付けてるね」

俺は顔だけ布団から出すと、雪男は俺のベッドの傍でしゃがみ込んでいた。
そしてニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。

「買ってきたの?」

「うるせー…」

「もう一回見せてよ」

「………」

「頼むよ、姉さん」

「………う〜っ!!」

俺は雪男のこの言葉に弱い。
こいつはそれを知っているからこうやって絶妙のタイミングで使うのだ。
俺はありったけの勇気を振り絞って恐る恐ると身体を起こしてベッドの上に座る
毛布は肩に掛かったままだけど、それでも前が開いてるから見えるだろう。
雪男が開いた部分の毛布を捲ってじっとりとしたやらしい目で俺の身体を見た。
緊張して身体が震える。

「可愛い」

くすくすと笑う雪男。
メガネのストック全部割れちまえ。

「もしかしてこれも全部そうなの?」

これと言ってベッドの脇に置いてあるデカイ袋を持ち上げる。
もちろん、その中身は当たり前のように全部下着だ。

「結構買ってるけど、お金よく足りたね。下着って高いんでしょ?」

「金は全部メフィストの奴が…」

そうだ、俺は買う前に資金に悩んだ。
俺の二千円という金ではあまりにも心もとない。
そしたらメフィストがどこから聞きつけたのか俺にブラックカートとやらを手渡したのだ。
「奥村君、私には貴方の面倒を見る義務があります。そんな胸でも下着はちゃんとしたのを付けなさい」なんてムカツク事をいいながら。

「…フェレス卿に?」

「あ、あいつが勝手に黒いカード渡してきたんだよ!」

「…そう」

若干不機嫌気味に雪男はそう言った。
なんだ、どうしたんだ?

「ねえ、これは全部姉さんが選んだの?」

「いや、店員さんやしえみがススメてくれたのとか、あと今付けてるのは志摩おススメの男受けのいい奴」

「はあ?」

あっ、ヤバイ。
俺はそう思った。

だって明らかにさっきまでよりも急激に不機嫌になった。
なんだ、どのワードがダメだった!?
雪男がメガネを上げてこれ見よがしにため息をつく。

「ゆ、雪男…?」

「…もっとよく見せてよ」

「は!?いや、もうこれ以上は…」

やばいやばいと頭の中で警報が鳴る。
ああ、だけどベッドの壁際まで追い込まれて逃げられない。

「ああ、よく見れば紐だったんだ。やらしいなぁ」

「あ、あの、雪男…」

「なに?」

「お前、なんか怖い…」

「気のせいだよ」

「ねえ、コレ、解いてもいい?」

「だ、だめ」

「それじゃあ見る」

「わっ、わわ!」

そう言って雪男は俺の足首を掴むと、上に引っ張られて俺はベッドの上に転がってしまった。
ついでとばかりに雪男もベッドの上に乗り上がると、足首から膝裏に手が移動される。
俺は嫌な予感がして抵抗しようとするが、それでも両足を掴まれていて抵抗が出来ない。
そしてとうとう雪男の目の前で思いっきり足を開かされてしまった。まさにこれが本当の御開帳。
なんて破廉恥な格好だと顔が熱くなる。
色々とやばい部分を見られている。しかも下着姿で、紐パンで。

「可愛いよ、姉さん」

「やっ、…見るな…」

もう俺は恥ずかし過ぎて顔を両手で隠すことしか出来なかった。
雪男は触るでもなく、ただ俺の恥ずかしい場所をじっと見ているだけ。
見ているだけなのにヤバイ。恥ずかしいだけじゃなくて、もっと別のものが…。

「さすが志摩君。男受けがいいのを分かってるね」

「うう〜っ…」

「舐めるよ」

「え?…ひっ!ゃ、あぁ…な、舐めるって…ふぁ」

「言ったじゃない。舐めるよって」

ああ、言った。確かに言った。
サラッと!突然!舐めるよって!!
けど舐めるよって突然言われてハイソウデスカって心の準備だとか諸々出来ると思ってんのか!?

雪男は下着の上からなぞるようにして秘部を舐めてくる。
ゾクゾクとしたものが背中にやってきて、身体がだんだん熱くなってきた。
自然と息も荒くなってくる。

「や、ヤルんなら、普通にやれよ!!」

「普通ってなに?どんなの?」

「ど、どんなのって…」

いつも通りだよと答えると雪男は笑顔で首を傾げた。
こいつ、知らないふりを通す気だ。
っていうか、まだ股の間に顔があるから息が掛かる。離れてほしい。

「…お前、なんか怒ってる?」

「うん」

「えっ、なんで?」

「この下着。ムカツクくらい姉さんに似合って可愛いね」

「えっ、さんきゅー…って、ちょっ、また舐めようとするな!!」

俺は雪男の頭を掴んでやめろと言うが、それでも雪男はやめてくれない。
下着の上から秘部をなぞると、その隙間から舌を差し込んでくる。
掴んでいた手はだんだんと力が入らなくなり、まるで俺が押さえつけてるようにも見えてしまう。

「ふぁ、アぁ…ゆ、ゆき…てめ、は…バター犬か…あぁ、あっ!」

身体をビクビクと跳ねさせて快感に身をよじる。
だが下着の隙間から入っていた舌は抜かれ、雪男は俺の顔の横に手を置いて覆いかぶさるようにすると俺を見下した。

「ゆ、ゆきお…?」

はふはふと息を切らす俺に雪男はただ眺めるばかり。
もしかして止めてくれるのかと思ったが、実をいうと中途半端に止められると逆にきつい。
言ってはなんだけど、ヤルならヤルで最後までシテほしいかも…。
一体どうしたのかと雪男を見上げる。

「わん」

「………?」

「わん」

「あの、雪男さん…?」

「わんわん」

ゆ、雪男が、わんわん鳴いてる。あの雪男がわんわんって。
俺は信じられないものを見るかのように目を見開いた。
これはどういうことだと。

「わん」

そう言って雪男は俺の胸に鼻を摺り寄せてきた。
なんだこれ。なんだこれ。俺は混乱する。
弟が犬になった。

俺の気持ちなんて露知らず、雪男はブラジャーの前中心を舌で撫でつけ、器用に歯で掴む。
するとそれを噛んだまま思いっきり上に持ち上げられた。

「ひっ!!」

見てしまった。自分の胸が揺れる瞬間とやらを。
小さくても揺れるんだと変な思考に飛ぶ。

ブラジャーは本来の役目を果たさず、胸の上にずらされている。
雪男は口を放し、俺の胸の周りを執拗に舐め回してきた。

「ゆ、ゆきお…ひっ、ぁ、ぁあ…」

「わん」

雪男はさっきからそればかりだ。
なんでだ。どうしてだ。
俺がさっきバター犬って言ったからそれの嫌がらせか!?

「雪男、ごめん。謝るから、だから、あっ…それ、やめ…」

「わん」

ああ、ダメだ。どうやら許してくれないらしい。
胸の周りから乳首の方へと舌を這わせ、先端を軽く食む。
そしたら思いっきり吸われて、ダイレクトに伝わる快感に俺は思わず声を上げてしまった。

「あああっ!ダメ、ダメダメダメ!それ…だめっ…や…」

首をふるふると振り嫌だと伝えるが、それでも雪男は止めてくれない。
ああ、なんでこの弟はこんな鬼畜なんだ。

先端から口を放すがベロリとまた一回舐められる。
手での愛撫は一切ない。本当に犬のようにして俺に快感を与えてくる。
それに軽く身を震わせ、俺はもうどうすればいいのか分からない。
っていうか、そうだ。抵抗しないとダメだろ。犬の雪男に抱かれる気か。
なに普通に喘いでんだ俺は。

思い出したように俺は腕を使って抵抗する。
まだ着衣のひとつも乱していない雪男の服を引っ張り、離れるように促すと何を勘違いしたのか顔のほうに近づいてきた。
まあ、キスぐらいなら甘んじ受けてやろうと仕方なしに、そう、仕方なしに俺は腕の力を緩めた。

だが予想とは違う。
雪男はキスするのではなく、俺の頬をベロリと舐めた。
そして次は唇にこれまたベロリ。
まるで本当に犬みたいにして舐めまくる雪男。

「ゆ、雪男。ぶっ、キ、キスくらい、普通に…うぶっ」

喋るときもベロベロと唇を舐められる。
なんだこいつ。マジで犬になったのか?
それとも犬の霊にでもとりつかれてんのか?

「わん」

雪男は綺麗な笑みでそう言うだけだ。
そして舐めるばかりのキスは終わり、顔が胸から下、下半身のほうへと向かう。
またヤバイ所を舐められるのではと警戒したが、そこではなく、下着の紐が結んである場所に鼻を擦り付けてきた。
そして口を開き、紐に目掛けて歯を出すのを見た瞬間そこを両手で押さえた。

「ちょっ!ダメダメダメ!!なにする気なんだよ!?」

「わん」

「ふ、ふん。悪いな、俺人間だから犬の言葉なんてわかんねえわ」

これでどうだと俺は自信満々に答える。
ついでに胸を張ってやろうかと思ったが、まだブラジャーが胸の上にずらされたままで、その恰好のまま胸を張るのはなんだか恥ずかしい気がしたから止めておいた。

「…わん」

「だめだだめだ。そんな可愛い声で鳴いても」

そうだ、相手は犬なのだ。
犬の雪男なのだ!!
だったら充分に勝ち目はある。

「だからこんなお遊びはやめて、普通にだな…」

だが俺の言葉を遮るかのように、雪男は紐を隠してある手をベロベロ舐めてきた。
そして小指の先を舐め、舌でなんとか持ち上げるとそれを甘噛みする。
そこで動きが止まり、潤んだ瞳で上目づかいをする。
ハムハムと弱い力で小指を噛まれたらもう可愛くて仕方がない。

それはまさに昔の雪男。
泣いてばかりで俺の後ろにヒヨコみたいにしてついてくる天使だった頃の可愛い雪男。

いや、ダメだ。
こいつは天使の皮を被った悪魔なんだ。
騙されてはいけない、騙されてはいけない!
ほだされたらダメなんだ!!

「…くぅ〜ん」

最後の一声。
ああ、もうダメだ。
俺の心臓はいうなれば、そう、キュンとしてしまったのだ。

「……もう、好きにして」

「わん!」

それはもう嬉しそうに雪男は鳴いた。
噛まれている小指をクイッと軽く引かれて放すように促される。
俺は渋々放すと、雪男は結ばれている紐の端を口で咥え、まるで見せつけるようにしてそれをゆっくりと引っ張った。

スルスルと解かれていく紐に俺は目を塞ぎたくなる。
咥えられていた紐が完全に解かれ、もう片方も同じようにして口で解いていく。

「…ゆ、ゆきお」

俺は自然とふるふると震えていた。
恥ずかしくて顔は真っ赤だし、息は荒いし、雪男は犬だし、紐パンを口で解かれてるし。
なんだか訳のわからない状況だ。

「アッ!!そこ、だめ!!や、や…あ、ああっ!!」

茂みに顔を埋める雪男はそこに舌を差し込み、グリグリといいところを押しつぶしてくる。
溶けるような快感に俺はいやいやと首を振るが止めてくれない。
舐められ、押しつぶされ、そして思いっきり吸われると身体の奥がズクンと重くなる。

「だ、だめ…イク、イク、イッちゃう…!!ゆき、ゆきおぉ!」

「…わん」

「あ、う、ああああっ!!」

身体を弓なりにしならせ、俺はイッてしまった。

ああ、きっと全部この下着のせいだ。
いや、そもそも俺が雪男に「姉さんは色気たっぷりで困るよ」なんて言わせたいって思ったからか。
俺のバカ。俺はバカだ。
もう半分ほど働きかけなくなっている頭で俺はそんな事を考えていた。

「わん」

すると雪男がまた鳴き、俺はそちらの方に視線を向けた。
そして驚愕する。

「な、何やってんだお前はあああああっ!!」

驚くことに、もう紐を完全に解かれ、ただの布きれになっている下着を雪男は口で咥えていた。
しかもその下着はさっき俺がイッたせいでドロドロに汚れている。
俺は大慌てで身体をお越し、雪男が現在進行形で咥えている下着を奪い取ろうとするがひょいと簡単に避けられてしまう。

「おまっ、へ、変態!!変態!!」

「わん」

「犬のふりしてたら何でも許されると思うなよ!!」

さすがにしていいことといけないことがあるだろうと怒るが雪男は意に介さず。
咥えたままズイッと目の前まで近づき、俺を真っ直ぐに見る。

「なんでこんな事するか分かる?」

雪男はようやく人間の言葉を喋った。パンツを咥えたまま。なんて器用な。

「し、知らねえよ」

「怒ってるから」

「お、怒ってるって…」

「志摩君に男受けする下着教えてもらったんでしょ?」

「それは…」

「なんで?」

雪男の声は低くすごく不機嫌だ。
さっきまでの可愛らしい犬の姿は欠片もない。

「な、なんでって…」

言えない。
言ったらこの目の前の弟は呆れ果ててバカにされる。

「…わん」

すると下着を咥えたまま俺にキスをしようとしてくる。
やめろ、その咥えてる奴には俺の…あの、あれが付いてるんだぞ!!
雪男はそれを分かってやっているのだろう。
顔をズイズイと近づけてくる。

「分かった!!言う、言う!!」

「ん」

雪男はようやく口から下着を放した。
そしてまた俺に強い視線を向ける。

「…い、色っぽくなりたかったんだよ!!」

「…色っぽく?」

「………お前が、色気ないなんて言うから」

そこまで言ったら俺はなぜか涙がポロリと一粒流れた。
いや、一粒だけじゃない。もう二粒流れ、次々とあふれ出す。

「姉さん?」

「あ、あれ?なんか、勝手に涙が…」

ポロポロ流れる涙に俺も驚く。もちろん雪男も驚いてる。
すると雪男に腕を引っ張られてぎゅっと優しく抱きしめられる。

「…ごめん。僕が悪かったよ。色気がないだなんて言ってごめんね」

「…ん」

雪男の肩に頬を摺り寄せる。
ああ、俺意外と傷ついてたのかな?
好きな奴に色気ないって言われて、だからこんなに泣いてんのかも。
雪男もそれを理解してか優しく背中を擦ってくれる。

「大丈夫だよ、姉さんは魅力的な人だから」

「…姉さんは色気たっぷりで困るって言え」

「なにそれ」

「いいから!!」

「…姉さん」

耳元に唇を寄せる。
俺は心なしか雪男が言うだろう言葉にちょっとだけわくわくした。

「…姉さんはいやらしすぎて困る」

「ぶっ!!な、何言って!?」

まさかの予想外の言葉に俺は驚く。
誰がそんな事言えっていった!?

「この下着だって、最初はすごくドキドキしたよ。けど男受けがいいだとか、志摩君のおススメとだか、そんな事言われてすごく腹が立った」

「ゆ、ゆきお」

「こんな姿僕以外に見せないで」

嬉しい。
ただ純粋にそんな言葉が湧き上がった。
雪男は嫉妬していたのだ。
俺が他の誰かに見せるだなんて、そんなことありえないのに。

「…仕方がねえから、許してやるよ!」

雪男の背中に回した腕に力を込めてぎゅっと抱き着く。
それに応えるように雪男は俺にすり寄った。

「ねえ、姉さん」

「んー?」

「色々言ってたけど、僕は別に普段の下着でも姉さんは充分に可愛いと思うよ」

「お前なぁ…」

可愛いとか、ありえない。
色気がないって言った張本人が。

「それじゃあこの下着全部捨ててやる」

「却下。だってこれすごい興奮するもん」

「…どっちだよ」

「毎日着ろとは言わないから、たまに着て喜ばせてよ」

「やっぱりあっちの下着は嫌なんじゃねえか」

「あれはあれでまた別の意味で興奮するんだよ」

ダメだこいつと頭を抱えたくなる。
これはある意味変態の域なんじゃねえか?
そう思っていると、抱きしめられたまま雪男に押し倒された。

「とりあえず、いいかな?」

もう結構辛いんだけど。
なんて言って俺を見下ろす。
ああ、そうだろうな。知ってたよ。
だって抱きしめ合ってるときすっげー当たってたもん。

「…変なプレイすんなよ」

犬とか。
俺は雪男のメガネを外してやる。

後日、どこで知ったのか雪男がプレゼントと称してサイズぴったりの下着を俺に贈ってきた。
かなり際どい奴でブン投げてやったけど、そのまた別の日、こっそりと着てるのがバレて酷い目にあった。






























2011/06/18
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